日本橋に登場「音楽が凄いホステル」の舞台裏 「東京に音楽を根付かせたい」経営者の男気

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大学生だった当時、「世界」という単語から想起されるのは戦争や貧困といった社会問題だった。人種間や宗教間には深い隔たりがあるイメージ。テレビのニュースを通して見る世界とは、そういう印象を伴うものだった。

地下にあるバーラウンジでは、ビールやワイン、ウイスキーなど、さまざまな酒と料理が楽しめる(写真:Backpackers' Japan)

しかし、このとき目の前に広がっていた景色はまったく違った。異なる人種、世代、思想。そんな多様な人たちが一堂に集い、自由に楽しんでいる空間。その景色になぜか涙が止まらず、「これだ」とわけのわからない決心をしたのを覚えている。

今から12年前。まだ教師を目指していた20歳の自分にとって、世界の見方を根底から変えてしまうほどの鮮烈な体験だった。

ないなら、作ろう

大学に戻ってもケアンズの景色が忘れられなかった。日本のクラブやライブハウスに行ってみるものの、同じような感動は得られない。DJがつくる一体感を生むグルーブも、アーティストがあおり皆で拳を突き上げるライブの盛り上がりも、私が求めている音楽とは違った。

音楽を聴いている最中に考え事をしたいし、仲間とわいわい飲むのもいい。なんなら偶然居合わせた隣の女の子に話しかけても、アーティストに失礼にならないくらいのものがいい。もっと自由で、気軽なもの。何が違うのかと考え続け、1つの結論に行き当たる。

バーラウンジでは、宿泊している世界中のゲストや近隣の人々が行き交う(写真:Backpackers' Japan)

ケアンズで見た景色。あれはつまり、最高に質の高いBGMが鳴る空間なんだ、と。

ないなら、作ろう。教師になることをやめ、2010年、株式会社Backpackers’ Japanを創業した。あの景色の再現を胸に、「あらゆる境界線を越えて、人々が集える場所を」という理念を掲げた。世界のゲストが宿泊できる宿と、泊まっていない人も含めて広く利用できるバーラウンジを合わせて展開していくことに決めた。

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