《よく分かる世界金融危機》銀行間取引が凍結。短期金融市場で何が起こっているのか

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最近は円資金すら調達がままならない

「まあ、それも欧米のことだから」などと、対岸の火事を眺めているようなことはできない。なぜならば、今、東京のインターバンクマーケットも同様の事態に直面しているからだ。やはり、銀行間に相互不信が蔓延して、マーケットに資金を放出する向きが極端に乏しくなってしまった。いきおい、銀行間レートがハネ上がる場面が発生している。

断っておくが、これはドル資金についてではない。すでに邦銀によるドル資金の調達は困難化していたが、最近は円資金すら調達がままならなくなっている。

1990年代の金融危機の際にも同様の現象は起きた。このときも銀行が他の銀行の経営状況に不信を深めてしまったからだった。現在も保有証券化資産の劣化、経済悪化に伴う不良債権の増大、株価暴落による株式の含み損拡大といったネガティブ要因から「銀行の自己資本比率が大きく低下している」という推測が膨らみ、インターバンクマーケットには疑心暗鬼という名の亡霊が徘徊し始めている。

ちなみに、欧米、そして、東京のインターバンクマーケットで資金調達できずに資金繰り破綻する銀行が発生していないのは各国の中央銀行が公開市場操作により巨額の資金供給を継続しているからだ。言ってみれば、この資金供給は干天の慈雨のようなもの。仮に、それが途絶えれば、乾ききったマーケットの中で銀行は資金調達できずに日干しになって野垂れ死にせざるをえない。

つまり、世界中の銀行は今、インターバンクマーケットという舞台の上で、中央銀行による資金供給という名の綱渡りを続けている。もちろん、綱が切れれば、銀行は転落死する。それによって、企業金融は動揺を来し、実体経済はさらに悪化する。

この信用収縮、つまり流動性危機を解消するには、その真因である銀行の過小資本化を抜本的に解決して市場の疑心暗鬼を払拭するしかない。各国が銀行への公的資金注入による資本強化を急いでいるのはそのためだ。

<KEY WORDS>
LIBOR
 ロンドン銀行間基準金利。「ライボー」と読む。銀行間の資金取引のベースレートとなり通常、最優遇金利。実施の取引レートは「LIBORプラス50bp=ベーシスポイント」というように、ベースレートにどの程度のスプレッドが上乗せされるかで表示される(100bp=1%)。企業の場合も調達金利は同様に、LIBORプラス100bpという表記。上乗せされるスプレッドは調達者の信用力を反映。ちなみに、東京市場の基準金利はTIBORと名付けられている。
 
公開市場操作
 各国の中央銀行は通常、金融政策の浸透のためにインターバンクマーケットに直接参加し、資金を放出したり、吸い上げたりしている。これを「公開市場操作」「マーケットオペレーション」と呼んでいる。しかし、現在、各国の中央銀行が盛んに行っている資金供給は平時の資金供給ではなく、信用収縮回避のための非常手段。日本銀行は9月以降、円資金のみならず、ドル資金の供給も行っている。

(週刊東洋経済)

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