「宮川選手=正義」「塚原夫妻=悪」はまだ早い スポーツ界に連鎖する「勇気の告発リレー」

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コーチからの暴力を巡る問題で、記者会見する体操の宮川紗江選手(右)=8月29日午後、東京都内(写真:共同通信)

今年に入って何度目のスポーツ団体に関する騒動でしょうか。7月11日に日本体操協会へ「速見佑斗コーチ(34歳)の暴力行為に関する通報」が入ってから約2カ月弱。8月29日に行われた宮川紗江選手(18歳)の会見が物議を醸しています。

通報後、日本体操協会はパワハラの事実確認をはじめ、速見コーチへの聞き取り調査を実行。速見コーチはパワハラの事実を認めて反省の意を表しました。日本体操協会は理事会を開いて速見コーチの処分を決議し、8月15日に「無期限登録抹消」などの懲戒処分を発表。「騒動も一件落着か」と思われたところ、21日に宮川選手が代理人弁護士を通して文書でパワハラを否定し、速見コーチの指導続行を訴えたことで、事態が一変しました。

さらに24日、日本体操協会が経過説明の文書を発表し、速見コーチが東京地裁に「指導者の地位保全を求める仮処分の申し立て」をしていることが発覚。宮川選手が27日からはじまった世界選手権代表候補合宿に参加していないことからも、「コーチ1人のパワハラというレベルの問題ではない」ことが、うわさされはじめました。

そして29日、会見を開いた宮川選手は、速見コーチの処分軽減を求めること以上の強烈な告発を行ったのです。それは日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長(71歳)と夫・光男副会長(70歳)からのパワハラ。「まだ18年しか生きていませんが、人生の中で一番の勇気を出してここに立っています」という言葉が事の重大さを物語っていました。

告発のさなかに「確信」を繰り返した意味

2016年12月19日、塚原本部長から宮川選手のもとに電話が入り、「(日本体操協会が主導する)2020(東京五輪特別強化選手)に申し込みをしないと協会として協力できなくなる。五輪にも出られなくなるわよ」と言われ、ナショナルトレーニングセンターの使用も制限されてしまいました。

さらに今年7月15日、宮川選手は塚原夫妻から代表合宿の練習中に呼び出され、速見コーチによる暴力の証言を強く求められたほか、「(速見コーチを信頼している)家族でどうかしている。『宗教みたいだ』と高圧的に言われた」と明かしたのです。

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