「宮川選手=正義」「塚原夫妻=悪」はまだ早い スポーツ界に連鎖する「勇気の告発リレー」
その他にも、塚原光男副会長が総代、千恵子本部長が女子監督を務める朝日生命への移籍をうながされたことを受けて、宮川選手は「最初から速見コーチの過去の暴力を理由に『速見コーチを排除して朝日生命に入れる目的なんだ』と確信に変わりました」「速見コーチと私を引き離すことを前提に多くの力が働いていたことは間違いなく、そこに『強化本部長が大きくかかわっていたことは間違いない』と確信しています」とコメント。繰り返し“確信”と言い切ったところに、選手生命を懸け、退路を断った上での発言である様子が伝わってきました。
こう言い切れたのは、「当事者の宮川選手に聞き取り調査をしなかった」「速見コーチの聞き取り調査には代理人弁護士の同席を認めなかった」ことから、日本体操協会に不信感を抱いたからでしょう。日本体操協会の対応は、「上の方針に従うのが当然」という組織体質を思わせるものであり、当事者たちを軽視している様子が浮かび上がりました。
宮川選手の会見から約1時間後、日本体操協会の会見が行われたものの、山本宜史専務理事と弁護士は速見コーチのパワハラを時系列で説明しただけで、宮川選手の会見内容については「コメントを差し控えます」の一点張りでした。
時折2人がコソコソ話すシーンがあるなど、「誠実な対応をしよう」という姿でなかったのは誰の目にも明白。「そんな態度なら何で会見をしたのか?」と言われて当然の失態を犯してしまったのは、宮川選手の会見内容が想定外のもので、対応できなかったからではないしょうか。しかし、もしそうだとしても、「自分の言葉で話す」という誠実な姿くらいは見せられたはずです。
「塚原夫妻を断罪する」のは時期尚早
同じ日にわずかな時間差で会見を開いたことで、宮川選手の「本気」「覚悟」と、体操協会の「適当」「及び腰」というコントラストが鮮明になりました。これを見た世間の人々やメディアが「どちらに味方したくなるか」は一目瞭然でしょう。
案の定、世間の人々もメディアも、「宮川選手=正義、体操協会=悪」とみなして批判一色になりつつありますが、そうすることが問題の改善を遅らせ、「アスリート・ファースト」という本質から外れる危険性をはらんでいます。まずは第三者が事実を調べ直した上で、「どこをどう改善すべきか」を見極め、実行に移すというステップが重要なのであって、過剰な批判は、その判断を焦らせ、狂わせることにつながりかねません。
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