退職勧奨に応じた34歳男性がハマった袋小路 「このままではホームレスになるしかない」

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この専門商社を辞めた頃、世間はリーマンショックの影響で、景気は悪化。仕事探しは難航し、やむをえず派遣社員として働き始めた。年収は二百数十万円で、前職に比べて50万円以上のダウン。一方で職場の人間関係には恵まれ、心身はしだいに回復したという。

ところが、勤続4年を過ぎると、突然、派遣元の営業担当者から雇い止めをほのめかされるようになった。この担当者はあろうことか「あなたのような人が何年も派遣社員なんて仕事をしていていいんですか。このまま働いても、将来、時給が上がることもありませんよ」と説得してきたという。

「採用時は、『あなたのスキルとキャリアを生かしてください』と言っていたくせに」

テツハルさんがあきれて担当者の話を受け流していると、今度は、派遣先が閑散期に入ったという理由で、突然、1カ月間にわたり出勤日をゼロにされた。“兵糧攻め”である。結局は雇い止めに応じざるをえなかった。

典型的な雇い止めの手口

勤続4年を過ぎた頃の雇い止め――。これは、労働契約法18条に基づく「無期雇用転換」を逃れるための典型的な手口なのではないか。

同法18条は、アルバイトや派遣社員などの有期契約労働者が通算5年を超えて契約更新した場合、期間の定めのない無期雇用へと転換することができるとしている。しかし、無期雇用にしたくない一部企業が、無期雇用転換が始まる2018年4月より前に従業員を雇い止めにする「無期転換逃れ」が社会問題となっている。

私がそう指摘すると、テツハルさんは「そういう法律があることはなんとなく知っていました。でも、自分とは関係ない法律だと思っていました。派遣会社から何の説明もなかったですし……」と言う。

今年3月に退職した会社は、派遣社員を雇い止めされた後、ようやく見つけた仕事だった。年収も約280万円と比較的安定していた。しかし、正社員は簡単にクビにならないというテツハルさんの見立てとは裏腹に、同じ時期、彼を含む数人の正社員が退職勧奨を受け、辞めていったという。

テツハルさんは今も就職活動中だ。条件は、「ボーナスがあって、身分保障が手厚い」正社員だという。この間、インターネット上の転職サイトやハローワークを通して約200社に書類を出したが、面接できたのはわずか30社ほど。「年齢がネックになっていると思います」。

就職活動をする中で、3月まで勤めていた会社の求人情報を偶然、目にする機会があった。小規模な人員募集だったこともあり、自分の後任がアルバイトとして募集されていることを知ったという。テツハルさんは「自分の仕事はアルバイトでもできたと言われているような気がして、すごく不愉快でした」と憤る。

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