退職勧奨に応じた34歳男性がハマった袋小路 「このままではホームレスになるしかない」

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会社に言われるまま退職に応じていては、正社員になった意味が…(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

記録的な猛暑日が続いた7月末。テツハルさん(34歳、仮名)は就職活動に奔走していた。

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ある日の正午過ぎ、都内のオフィス街を汗だくで面接会場に向かっていたとき、ふいに足がもつれた。景色がゆがんで見えるのは、陽炎のせいなのか、それとも自分がめまいを起こしているのか。慌ててコンビニエンスストアを探し、冷房の利いた店内に飛び込んだ。

「軽い熱中症だったんだと思います。電車代を浮かそうと、1駅分歩いたせいです」

切られるとしたら非正規社員からだと思っていた

テツハルさんは今年3月、正社員として勤めていた会社を「強制的に退職させられた」。

退職の1カ月半ほど前、上司に別室に呼び出され、「来年度のわが社にとって、あなたは戦力ではないと判断しました」と告げられた。このときに手渡されたのが、A4判サイズ1枚の「合意書」。

合意書には、「退職勧奨」を承諾することや、退職金を通常の規定に上乗せした計72万円とすることなどが箇条書きされていた。加えて一連の合意内容を第三者に漏らさないこと、退職について聞かれたときは「円満退職」とのみ述べることといった旨も記されていた。

「会社の業績が悪いというウワサはあったんです。でも、切られるとしたら、高齢の嘱託社員や派遣社員の主婦の人たちからだと思っていました。同僚たちとは『僕たちは正社員でよかったね』と話していた矢先だったんです。だから、(退職勧奨は)寝耳に水で……。退職金72万円といっても、これじゃあ口止め料じゃないですか」。

正社員でよかった、という屈託ない物言いに、かすかな違和感を覚えた。しかし、非正規労働者が真っ先に切り捨てられる現状があるのもまた事実である。

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