「Apple 京都」が世界最強の店舗といえるワケ アップルは店舗のあり方も再発明した

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何を隠そう、亡くなったアップル共同創業者のスティーブ・ジョブズも京都という街を愛し、晩年も家族などを引き連れてプライベートで訪れていた。ちなみに京都には俵屋旅館や彼のサイン入り色紙があるすし岩、西芳寺(苔寺)などジョブズゆかりの地も多く、死後、世界的ベストセラーとなった評伝『スティーブ・ジョブズ』を片手にゆかりの地を回る観光客もいる。

Apple 京都が店を構える四条高倉は、もともと訪日外国人の人通りも多く道に並ぶ看板やメニューには英語表記が目立つ。そこにアップルは、日本全国に加え、遠くはアムステルダムやマイアミなどから合計100人以上の店員スタッフを集め合計で12の言語に対応する、という。

訪日外国人観光客には、無料で高速なWi-Fiアクセスができる、という点だけでも十分な魅力となりえるが、それに加えて母国語で会話ができる親しみやすい店員がいるとなれば必然的に利用は増えるのではないだろうか。

来店者に価値を無償で与えるアップル直営店

2020年のオリンピックに向けて再開発が盛んな東京。次々と話題の商業施設ができあがるが、ちょっと時間が経ち、次の商業施設ができあがる頃には人気が落ち着いてしまう場所も少なくない。そんな中、1つ1つの店舗をじっくり時間をかけて開発し、完成後もじっくりとコミュニティーづくりに時間と労力をかけるアップルの直営店から学べることは多い。

商品の購入には関係なく、とにかく人が集まる溜まり場づくり、という点ではカルチャー・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開する「蔦屋(TSUTAYA)」も大きな成功を収めている。しかし、さらにそこで来店者に確実に価値を無償で与え、それによって製品への愛着を築くという形で無償奉仕を自社の価値に還元できる点では、メーカーの直営店という形態に分がありそうだ。

これからもeコマースの利用は、さらに勢いを持って広がっていくはずだ。しかし、それが必ずしも小売りの死を意味するとは限らない。アンジェラ・アーレンツが言う通り、小売にはまだまだ進化の余地がある。老舗企業がよく使う「伝統は革新の連続」という言葉があるが、今の小売りは守りに入りすぎて「革新」が足りていないのかもしれない。

林 信行 フリージャーナリスト、コンサルタント

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はやし のぶゆき / Nobuyuki Hayashi

1967年、東京都出身。フリーのジャーナリスト、コンサルタント。仕事の「感」と「勘」を磨くカタヤブル学校の副校長。ビジネスブレークスルー大学講師。ジェームズダイソン財団理事。グッドデザイン賞審査員。「iPhoneショック」など著書多数。日経産業新聞「スマートタイム」、ベネッセ総合教育研究所「SHIFT」など連載も多数。1990年頃からデジタルテクノロジーの最前線を取材し解説。技術ではなく生活者主導の未来のあり方について講演や企業でコンサルティングも行なっている。

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