「Apple 京都」が世界最強の店舗といえるワケ アップルは店舗のあり方も再発明した
リテール(小売り)ビジネスは、1兆ドル企業アップルにとっても重要な一角を占めている。直近の2018年度第3四半期の会計報告でも532.65億ドルの売り上げのうち、小売りビジネスの売り上げは67.28億ドルと12.6%を占める。eコマース事業は85.59億ドルとそれを上回るが、実はここにはアプリ販売のApp Storeや、映画/音楽/電子書籍そしてアメリカではテレビ番組も販売しているiTunes Storeでの売り上げも合算されている。それらを差し引けば小売りビジネスの規模がeコマースに負けていなそうだと察しがつく。
バーバリー再建CEOが新コンセプトでリニューアル
そんなアップルの直営店部門を率いているのはアンジェラ・アーレンツ上級副社長。アップル入社の条件としてeコマースの販売も統括している。
2013年までは英国のファッションブランド、バーバリーのCEOを務め、7年の在任期間中に企業価値を20億ポンドから70億ポンドまで高めた。アップルにヘッドハントされる直前の2012年では英国でもっとも高所得のCEOだった(CNN調べ)。
彼女の就任で、すでに売り上げ効率で世界一の成功を収めていたアップル直営店ビジネスはさらに磨きがかけられ、成功に拍車がかかっており、ティム・クック氏の後任となるCEO候補の1人と度々、うわさされている。
アーレンツは、6月に開催されたクリエイティブ業界のイベント「Cannes Lions 2018」に登壇し、その秘訣を語っている。曰(いわ)く「小売店を(アップルの)最大の商品と捉えています」。彼女によれば、製品としてのハードウェアは店舗の建築で、ソフトウェアはお店の中での体験だという。実はこの発想は故スティーブ・ジョブズが考えていた直営店の捉え方を発展させたものだという。
アーレンツは、CEOのティム・クックやChief Design Officer(最高デザイン責任者)のジョナサン・アイブ卿らとともに直営店が果たす役割を練り直し、「Town Square(街の広場)」というコンセプトにたどり着く。街のランドマークとして、クリエイティブな人々が自然と集まってくる広場、というコンセプトだ。新コンセプトにあわせて、それまでのApple Storeという呼称もあらため、全店舗の名前からStoreを取り去った。これによりたとえば「Apple Store Omotesando」は「Apple 表参道」になった。
ハードウェア、つまり建物としてのデザイン原則はアップル本社の建築デザインにもかかわった、英国を代表する建築家、ノーマン・フォスター卿の建築事務所「Foster+Partners」とともにつくった。「広場」を目指すだけあって、人通りの多い目抜き通りと地続きな空間づくりを目指す。
Town Square型店舗の第1号は2016年、サンフランシスコ市に開業した「Apple Union Square」だ。同店は金属製の側面と天井だけからなる空洞状の構造で、その前後を巨大なガラスが覆う。実はこのガラスが回転し、店のドアにもなれば、天気がよければ完全開放して通りとの境をなくすこともできる。
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