「Apple 京都」が世界最強の店舗といえるワケ アップルは店舗のあり方も再発明した
かつてのアップル直営店にはジーニアスバーという、修理依頼をはじめアップル製品や関連する他社製品について、あらゆる質問に答えてくれるエキスパートが常駐するエリアがあったが、これはなくなった。提供されるサービスは残っているが、より広場のコンセプトに融合している。オンラインで(あるいは店頭の端末で)予約を受け付けた後、店内の空いているイスやテーブルを使って相談にのるスタイルに移行したのだ。これにより店員とさらに近い親密さを味わえる距離感のサービスに進化している。
Town Squareのスタイルは、最近建てられた新築の店舗に採用されているだけでなく、すでにある旗艦店も徐々にTown Squareスタイルにつくり変えられはじめている。実際、ニューヨークのFifth Avenue店やロンドンのCovent Garden店そして日本の渋谷店などは現在、Town Squareスタイルへの改装に向けて一時閉店中だ。
先に触れたCannes Lions 2018での公開インタビューで、アンジェラ・アーレンツはこう語った。
「小売業は死にかけているわけではないが、進化が必要です。小売業は変わり続ける必要があります。そしてただ単に商品を売る以上のもっと大きな目的を果たす必要があります。なぜなら売る行為そのものは、今や誰もがより早く、より安くできるからです」
アップルは、地域との交流も深いランドマークをつくる方向で、その進化の方向性を模索しているようだ。
店舗を主要都市のランドマークに
アーレンツの参画で、さらなる進化を遂げたアップル直営店事業だが、変わらない側面もある。その1つはお金に糸目を付けず最高の立地を狙う戦略だ。
今でも思い出されるのが、2003年のApple 銀座(当時はApple Store Ginza)のオープニングイベントだ。同店はアメリカ以外で初の直営店ということもあり、故スティーブ・ジョブズCEO自らオープニング前の説明会で店の特徴を紹介した。このとき、記者の1人から「なぜ秋葉原ではなく、地価の高い銀座に店をつくるのか」という質問が出た。ジョブズは「来たか」というような不敵な笑みを浮かべた後、こう答えた。
「アップル直営店の戦略は、もともと人通りが多い目抜き通りに出店し人々の目に触れさせることであって、そのためであればお金には糸目をつけない」
アップルは、その後も、人通りの多い街の目抜き通りばかりを狙って店舗を増やし続けている(とっても、雑多な繁華街などは避け、文化的色彩の強いエリア、高級ブランド店が軒を連ねる洗練されたエリアを選んでいる印象が強い)。そうした最高の立地に、お金をかけた美しい店舗を築くことで街の新しいランドマーク(名所)にしていこう、というのがアップルの狙いだ。
目立つ場所で言えばパリのルーブル美術館のガラスのピラミッドの下にも店舗があれば(2009年開業)、映画などにもよく登場するニューヨークのグランドセントラル駅の中央階段の巨大な踊り場にも、壁がなく閉店後は「立ち入り禁止」のガイドポールとロープで仕切るだけの極めて開放型な店舗をつくった(2011年)。
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