服選びで1万人超を変えた女の屈託ない輝き

「自分も他人も」私は装いの力を信じる

伝説のCAと呼ばれる女性の、ある日のフィッティング風景(筆者撮影)

2時間に及ぶ試着の間、みなみは全身で顧客に向かってアンテナを張る。リラックスした空気を作りながら、顧客が身につけた洋服の顔色への映え方や全体細部を見るのはもちろんのこと、本人のキャラクターの出方など細かな20以上の項目を自然と頭の中で集中してチェックしていく。そして服の印象や日常生活などについて、たわいなさそうに聞こえる会話を決して切らさない。なぜなら、そこに垣間見える顧客の反応こそが装いの成功を左右するからだ。

「私がチェックする20項目のうち、19項目までは私の判断ですけれど、最後の1つはお客様ご自身のもの。着る場面をイメージしていただいて、ご自身がウキウキするか、その日会うべき人に会っている様子が想像できるかで決定します。実際に着る場面のことを最も知っているのはご本人。ご自身と30年、40年向き合っているご本人以上に、私がわかるわけがありませんから」

洋服のフィッティングはセッションだ

ここに、みなみならではのキャラクターが光る。彼女のスタイリングとはあくまでも顧客が自信を持って輝くためのものであって、みなみ自身の美意識を満たすためではない。

「顧客のクローゼットを見てどれもダメだと片っ端から断捨離し、『あなたにはこれが似合うのよ』とスタイリストが固めた最新のコーディネートを提示するようなスタイリングも以前ははやりました。でもそれによって、10年間大事に着てきた、思い入れのあるコートが捨てられてしまって悲しい思いをするお客様もいらっしゃるんです」

服の力を信じているみなみにとって、服は人とともにあるもの。「そのお客様が好きで着ているものは、結局ご自身が心地いいと感じる服なんです。それは、修繕しながらでも着続けていい」。

みなみはフィッティングを「セッションのようなもの」と表現する。「どうありたいか」を聞き、その中に本人の本質を表現するのがみなみの十八番だ。「仕事をする女性はどうしても、鎧を身につけてしまいがち。上司に言われるなどして『ちゃんとしなければ』『ふわふわしていてはいけない』と、社会とのかかわりの中で自分がどうありたいかがズレていくんです」。みなみが鎧を外す手伝いをし、顧客が見せたい姿とありたい姿を一致させると、相手は見る間にキャリアアップしていくのがいつものことなのだそうだ。

顧客が本当に似合う服を身につけた時、周りよりも本人から感嘆の声が自然と上がる。今日のフィッティングルームでは、「ああ、これよね!」との明るい声が何度も上がった。物腰柔らかく美しく聡明な「伝説のトップCA」には、海外のセレブリティがまとうような立体的な裁断とヨーロッパ的で華やかな柄、何よりも紺とライラック色がひときわ魅力的に映えていた。

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