ちなみにこちらの女性、とてもそうは見えないが50代にして新婚2年目。夫婦ともにメディアに出る職業のため、みなみが夫婦のスタイリングを手がけている。「夫が、ピンクを着て欲しいって言うのよ」との妻の口ぶりには、不満どころかふんわりとした幸福感だけがにじんでいた。
女性にとって「ジャケットは、社会とつながるツール」
「本当は、めっちゃ気が利かないんです」と、この道で接客業を20年以上も続けてきたみなみは言う。「飲み会で偉い人の隣に座ってもグラスが空になったことに気がつかないですし、すぐにお礼状が書けません。そういうビジネスの場の常識なんていうのは不得意。むしろ気が利かないほうなので、必死に倍くらい意識してやっと人並みです」。
5年間通った会社なのに電車を間違え、気づくと別の場所にいたこともある。興味のないことは、まったく視界に入らない。だが、人の装いだけには無意識レベルで相手に向かってアンテナを張れるという自負がある。コンプレックスや生きづらさを感じることもあるけれど、装いという角度から顧客が半歩先に望む未来を実現する手伝いなら、できる。自分が役に立てるところがここしかないのだから、これを大事にしようと決めた。「ここに1点集中、ここだけなんです」とみなみは繰り返した。
そんなみなみが働く女性のために提唱する装いのルールとは、とてもシンプルであるがゆえに共感を得る。水平方向には「4つの性格タイプ」、そして垂直方向に「フォーカジランク」。性格によって似合うファッションのテイストをフェミニン・キュート・シャープ・ナチュラルと4分類し、そのテイストの中でカジュアルからフォーマルまでの5段階の格付けをして、今日必要な装いはそのランクのどこに位置するかを考える。
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