アメリカで「アジア人の映画」大ヒットの理由 「クレイジー・リッチ!」は人種を超えるか

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――半分白人のヘンリー・ゴールディングを主人公の恋人ニックにキャスティングしたことには異論もあった。キャスティングに際して議論はなかったのか。

もちろん話題に出たし、相当長い時間をかけて話し合った問題だ。どういうことが起こりうるか、世間がどう反応するかについて私たちは神経をとがらせていた。だが最終的には、彼(ゴールディング)はまさにニックそのものだと感じるようになった。自分たちの問題意識は棚上げせざるをえなかった。

アジア系俳優にとっては転換期に

問題については理解しているし、話題になってよかったとも思う。だが私は多文化社会のシンガポール出身で、混血の親戚もたくさんいる。混血のアジア人がどちらの側からも100%は受け入れてもらえず、苦しんでいるのを見てきたから、その苦労には非常に共感できる。

『クレイジー・リッチ・アジアンズ』の著者、ケビン・クワン(写真右)と、『クレイジー・リッチ!』に出演した俳優のヘンリー・ゴールディング(左)、コンスタンス・ウー(中央)(写真:Mario Anzoni/Reuters)

どうして彼らがアジア人でないと言えるのか。人生の大半をアジアで暮らしてきたヘンリー・ゴールディングをどうしてアジア人でないと考えるのか。これが50年前だったら、(アジア人的な)外見を理由に彼に門前払いを食らわせる団体がたくさんあったはずだ。

――アジア人もしくはアジア系アメリカ人の映画をハリウッドで作る可能性について、この数カ月で何か変化は感じられたか。

もちろん。私が今進めている複数のプロジェクトにも大きな関心が集まっている。キャストについてもそうだ。みんなこれまでとは違った形で順調に仕事をしている。新たな役やチャンスを提供されている。俳優たちみんながこれまでとはまったく違った形で、アジア系とは関係のないプロジェクトで引き合いがあるんだ。状況はすでに変わりつつある。

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