キーコーヒーが「100年企業」になれた理由 農場壊滅、トアルコトラジャ復活、M&Aを経て

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キーコーヒーの直近決算の売上高は630億円、営業利益3.2億円(2018年3月期)。売上高は家庭用市場が堅調に推移し微増となったものの、利益面では高品質原料生豆の価格上昇や物流コストの上昇などにより減益となった。

昨今のコーヒー業界は、100円で買えるコンビニコーヒーが拡大する一方で、「ブルーボトルコーヒー」に代表されるようなコーヒーの産地や品種、抽出方法にこだわる「サードウェーブコーヒー」も登場している。コーヒー文化が多様化する中で、同社は、業務用4割、家庭用3割、原料用3割という売り上げ構成を持つ。この幅広い顧客に対応できるポートフォリオを武器に、足元では反転攻勢に出ている。

老舗企業としての使命感

歴代社長がそれぞれの形で事業を発展させてきたキーコーヒーだが、同社が一貫して大切にしているのが「品質第一主義」という理念だ。同社では、現地コーヒー農家と気象の変化や産地の苦労などの情報交換を密に行い、「TYPE KEY」と呼ばれる独自の厳しい品質基準を設け、それに合格した豆のみを入手している。

柴田裕社長(写真:筆者撮影)

また、毎年「KEY COFFEE AWARD」を開き、優れたコーヒー生産者や仲買人を表彰している。「生産者同士の交流や日本での飲まれ方などを伝える機会を創出し、作る人・買う人ではなく、同じ土俵に立ってともに高みを目指しています」(柴田裕社長)。

さらに、「2050年問題」と言われるコーヒー豆栽培の危機への対策も積極的だ。「2050年問題」とは、地球温暖化などの影響により、世界のコーヒー生産量の6割を占めるアラビカ種のコーヒー栽培に適した土地が2050年には半減するとされる問題だ。

これに対し、同社は国際的な研究機関、ワールド・コーヒー・リサーチと協業し、インドネシアの直営農園で気候変動にも対応できる品種発掘を行っている。柴田社長は「今後2020年の創業100周年を越えて、コーヒー生産者の生活水準の向上と、持続可能なコーヒー生産を実現していきたい」と話す。

2020年に創業100周年を控えるキーコーヒー。日本のコーヒー史上で確たる地位を築き上げた同社は、コーポレートスローガンでもある「コーヒーという情熱」を胸に、すでに次の100年を見据えていた。

伊佐 美波 帝国データバンク 東京支社情報部

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いさ みなみ / Minami Isa

1992年、横浜市生まれ。2014年入社。現部署の編集チームにて情報誌の編集・校正業務を経て、取材チームへ配属。企業取材や原稿執筆のほか、景気動向分析や企業経営に関するレポート作成を手がける。

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