では、マクロ経済の指標以外には、何か予兆としてとらえられるものはないのだろうか。公式データのように精緻ではないが、いくつか、怪しい匂いを放つデータはある。
1つ目に注目したいのが、円建て外債、いわゆるサムライ債の発行である。トルコは、2017年11月、4年ぶりに保証なしでサムライ債を発行している。世界金融危機以降しばらくは、国際協力銀行などの保証付きでしか発行できなかったが、昨年復活した。その矢先に勃発したのが今回の金融不安だ。
これまでにも類似の例は多い。2008年9月にリーマンショックが起きる直前のサムライ債市場は、アメリカのダイムラーやGE、英国のRBSと、その後金融危機に巻き込まれる銘柄のオンパレードだった。サムライ債の新規発行は、金融不安の早期警戒シグナルと揶揄されるゆえんである。
第1に財務の弱い発行体がサムライ債に走る
この理由は、危機に陥る直前、そろそろ市場の見る目が厳しくなってきたころに、市場金利が安い上、クレジット・スプレッド(信用力に応じた利ザヤ)に甘い日本市場で資金を調達しようとする発行体が多いためだ。
ところが、市場に不穏な空気が流れ始めると円高・自国通貨安になる。安易にサムライ債で調達してしまうと、コストを払ってヘッジしない限り、危機時に円建ての負債額が膨張してしまい、ますます返済が苦しくなる。
もちろん、サムライ債発行後も健全に活動している企業や国も多く存在する。しかし、財務的に弱く、事業環境も厳しいうえに、日本円の資金が特段必要とは思えないような発行体がサムライ債を発行する場合には、若干注意しておいたほうがよいだろう。
なお、今年のサムライ債の発行は、8月までですでに昨年通期の発行件数を上回り、金融危機以来のハイペースとなっている。顔ぶれには、トルコと同じく初の無保証サムライ債を発行したフィリピン、メキシコなどの低格付け債が入っている。不気味な兆候ではある。
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