次に、ETHのバブルリスク・マップがある。スイスのチューリッヒ工科大学(ETH Zürich)が毎週発表しているビッグデータ解析によるバブルリスクのアラートである。この研究チームは、かつてのサブプライム・ショックの時に、アメリカ市場の過熱とその転換点を言い当てたことで名を馳せた。
今年初めには、日本株に対して行きすぎのアラートが点灯していた。現在は、アメリカのテクノロジー株と原油価格だ。今回のトルコは、こうしたバブルリスク検知の対象ではないものの、他のバブル型の金融危機には参考になる。ETH以外にもリスクを専門にしている研究機関が存在するので、それらのアラートも予知の助けになるだろう。もっとも、これらの機関は、予測を外さないようにと、多めにアラートを発する傾向があるので割り引いて考える必要がある。
3つ目は低格付け債の「アウトルック」と「単価取引」
3つ目は、低格付け債券の「アウトルック」(先行き見通し)と「単価取引」である。
格付けは普通の投資適格レベルではあまりアテにならない。しかし、低格付けになると格付けが自己実現していく。債券が格下げされると、内部ルールで売らなければならない投資家層が増えるため、格下げが債券の売りを呼び、それがさらなる格下げを招く。1997年のアジア通貨危機でもこうした負のスパイラルが発生した。低格付け債券の「アウトルック」が「ネガティブ」とされた場合は警戒度を上げたほうがいい。
また、債券の価格が一定以上下がると、債券が「単価」で売買されるようになる。債券の世界では、通常の売買は債券利回りでやりとりされる。「A社の債券を利回り1.06%で買う」などといった具合だ。ところが、リスクが高まり、額面100円の債券が90円以下になると、利回りが1000bp(ベーシスポイント、bp=0.01%)を超えるなど、利回りを表す数字が大きくなってしまう。するとわかりにくいので「90円で買う」などと、債券の"単価"で取引されるようになる。
そこまで行くとデフォルトせずに無事回復する確率はぐっと下がる。債券市場では株式よりも逆張りが効きにくいためだ。このため「単価取引」に移行したかどうかも、(かなり状況が悪化した段階ではあるが)1つの目安になる。
来月にはリーマンショックから10周年を迎える。秋は金融リスクが高まるというジンクスがある。しばらくは、「ダモクレスの剣」探しを心掛けておいたほうがよさそうだ。
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