ドイツの「バブルの芽」はどうして問題なのか ECBが適切に対処することは難しい

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ECBは金融政策をドイツに合わせて引き締め気味にすることができない(写真:ロイター/Ralph Orlowski)

今の世界経済の安定は歴史的に見ても長期間続いている。こうした中、今後を考えるうえでどの部分に不均衡が蓄積しているのかが、重要である。国際決済銀行(BIS)の四半期データによれば、中国、カナダ、香港といった国々において過剰な債務が積み上がっており、その調整が深刻なものになるリスクが指摘されている。

しかし、不均衡の芽はまだ小さくとも「果たして将来に向けて現状が持続可能なのか」という疑念を筆者が抱いている国がある。それがドイツだ。BISが名指しする上記3カ国と比較して、また日米英といった先進国と比較しても、現時点でドイツが過剰債務を負っているという兆候はなく、むしろ最も債務は小さい。ドイツについてバブルを懸念するとか、その崩壊をあおるのは不適切と思われるかもしれない。しかし、現状がバブルの生成過程である疑いはある。とりわけ住宅価格に着目するとドイツの動きは他国と比べても特異で、近年の上昇ペースは米国のそれに近い。

米国が資産価格の騰勢などを横目にすでに金融政策を引き締め方向に傾けているのに対し、ドイツの場合は住宅市場の過熱感にもかかわらず、金融政策の緩和状態が当面放置される見通しであることには注意が必要だ。

今回は日本では意外に知られていないトピックとして、ドイツの住宅価格の近況について論点整理をしてみたい。

ファンダメンタルズ度外視の可能性

もちろん、周辺諸国に比べて住宅価格の騰勢が目立っていても、家計部門にとって「妥当な負担感」であれば、その伸び率や絶対水準は問題にならないはずである。だが、負担感という観点に照らしても、ドイツの現状は懸念に値する。

OECD(経済協力開発機構)のデータを基に「住宅価格÷所得」の比率を見てみると、米国を含むその他主要国ではリーマンショックの起きた10年前(2008年)に比べて依然、負担感は同等もしくはまだ軽いことが分かる。

ところが、ドイツだけは2017年時点ではっきりと比率が上昇し、負担感が増している。これは「住宅価格÷賃料」で見ても同じような結果である。需給に即して設定されるはずの賃料に比べて、住宅価格の上昇スピードが速いのである。

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