「恩返しを実行する人は気高い」といえるワケ スーパーボランティア尾畠さんから学ぶこと
8月15日、行方不明だった2歳の男の子がボランティアの男性によって発見された。この男性、尾畠春夫さん(78歳)に賞賛の声が集まっている。尾畠さんが言った「かけた情けは水に流せ 受けた恩は石に刻め」という言葉に感銘を受けた人も多かったのではないだろうか。
この言葉、「懸情流水 受恩刻石(刻石流水)」は、仏教経典が出典と言われる。タイ仏教においても、釈迦は、自分に対して利得を与える他者の恩を心に留めて忘れず、その後に何かの折りに、恩返しの行為を実行する人が気高い人であると言う。
「恩返し」の動機とは?
助けてもらった相手に恩返し(返報)を行うことは、社会生活では極めて重要だ。人間の場合、恩返しの動機になるのは、“感謝”のようなポジティブな感情であることもあるし、“負い目”や“借り”の意識のような必ずしもポジティブではない感情であることもある。
心理学では、前者のポジティブな感情はそのまま「感謝(gratitude)」、後者を「心理的負債(indebtedness)」などと称することが多い。恩を受けた「感謝」と「負い目」は表裏一体の感情であるように感じられるかもしれないが、近年の心理学では別々に取り扱われていることが多い。むしろ、感謝と負い目を同時に感じてしまうのは、日本人の特徴のひとつと考えられている。
日本の「恩」に関する海外の研究では、恩(ON)が、“感謝の負債(a debt of gratitude)”と表現されていたりする。また「すまない」に代表される日本語の謝罪的感謝表現を、“日本での感謝すべき状況における謝罪(apology in Japanese gratitude situations)”などと紹介されていたりする。そもそも、感謝という言葉にも、“謝る”という漢字が入っている。
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