「カメラを止めるな!」はなぜシェアされるか 社会人に共感呼ぶ痛快さが盛り込まれている

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それらの小悪党に対して、現場の板挟みになっている映像監督や、その妻、娘が痛快な懲らしめを見せる。筆者が最も好きなシーンの1つは、それまでおとなしくしていた映像監督が、前出の俳優や女優を、魂のままに怒鳴るシーンだ。モヤモヤしていた気持ちを笑いとともに気持ちよく吹き飛ばしてくれる。『カメラを止めるな!』を見た中で、これらのシーンが印象に残っている人は少なくないはずだ。

情熱を忘れてしまった大人の心を揺さぶる

2つめのポイントは、「応援したくなる成長ストーリー」だ。最初は周りに流され、仕事への情熱やこだわりがなく淡々とこなす映像監督。妻や娘からも仕事に関しては尊敬されず、良好な関係とは言えなかったが、見事にこれを挽回する。

この成長ストーリーは、仕事をはじめ日常において情熱を忘れてしまった大人の心を揺さぶる。「自分も頑張ってみよう」という気持ちにさせるところが、スカッとする。

最後のポイントは、作品の中身だけでなく、この映画自体のヒットストーリーも含めて、「大きな敵に小さな力で挑み、勝利を収める」という痛快さである。

本編で映画を撮るシーンでは、制約がある中で台本やセオリーどおりに進まず、アドリブで何とか適宜対応しながら、限られたリソースで一致団結し、目的を達成する。表向きには何とか納期に間に合わせ、形を取り繕っていても、実は裏側でスタッフはドタバタ、ハチャメチャ。そんな光景が企業社会のどこにでも転がっている「あるある」なのも共感を呼ぶ。

何よりテレビCMをバンバン流し、派手にお金をかけている映画よりも、大規模な宣伝活動もかけず、制作費の予算も少ない『カメラを止めるな!』を応援したくなる。「世の中で大々的には騒がれていないけど、私はとてもお薦めしますよ」という感染力の連鎖が起こっているのではないか。結果としてそれはマスコミを巻き込む、大ブームになっている。

岸 光月子 Emotion Techマーケティング部マネージャー、映画フリーク

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きし みつこ / Mitsuko Kishi

2010年白百合女子大学文学部卒。大手人材企業での営業経験、ベンチャー企業でのクラウドシステムのマーケティング・営業経験を経て、2017年Emotion Techにマーケティングマネージャーとして入社。Emotion TechはクラウドシステムとAIを使った感情分析を得意としており、こういった技術を活用し、多岐にわたる分野の分析も行っている。趣味は映画鑑賞と日本酒を飲むこと。映画の特に好きなジャンルは、サスペンス映画・ロードムービー・アクション映画。年間平均180本を超える映画を鑑賞。

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