銀行の重荷になる「決済インフラ投資」のムダ 現場と乖離した「利益なき大型投資」の迷走

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さらに、手形小切手は決済インフラも作り、電子記録債権に移行中であるが、手形「小切手のPDF化」して決済させようとする(チェックトランケーション)も審議されている。これも疑問が持たれている。電子記録債権への移行を業界として進めるべきではないか。無駄な二重投資となる可能性がある。その点、5番目の電子債権記録機関TRANZAXでは、受注からファイナンス(貸出)が可能になった。

ちなみに、株式の無券面化のように法律で強制的になくす(電子化させる)ことはできない。手形法が手形という紙(現物)をベースとしていることと、手形で貿易決済を行うように手形法は国際法であることからである。

さらにいえば、決済インフラとしての「フィンテック対応」も同様である。仮想通貨は行政処分が相次いでいるし、仮想通貨を支える「ブロックチェーン技術」も、BISが年次報告書(今年6月)の第5章で「致命的な欠陥」があることを指摘している。構造的に運営費用が高く、莫大な電力を消費し、遅いとしている。中央銀行デジタル通貨にも疑問を呈している。“BIS”が報告したことの意味は重大である。

決済部門はアウトソースすべき

参考であるが、SBIグループが主導し、3メガバンクを含む最大61行の邦銀が加盟していた「内外為替一元化コンソーシアム」というプロジェクトがある。(BISに否定された)ブロックチェーンの技術を使い、安価で高速な送金プラットフォームの開発を目指そうとするもので、全銀システムなどに対抗したものである。

しかし、この銀行間の決済ネットワークができたとしても、実質的には口座振替で既存の全銀システムなどの国内決済システムと2つが併存することになる。そのため、その存在意義に疑問が寄せられている。まさに、経営判断として今年3月末、千葉銀行や伊予銀行、十六銀行、武蔵野銀行、筑波銀行、オリックス銀行など11行が、連合から離脱した。高い加盟費も問題になった。

このように決済インフラの対応に見られるように、決済部門は強みとならず、それどころか莫大な経営負担(弱み)となる。経営判断とすると、一般の銀行では保持している意味合いが薄れている。経営的には強みになりえない部門は切り離す(アンバンドリング)べきである。決済専門銀行はあるが、一般の銀行は決済部門はアウトソースすべきであり、そうすることが経営判断としても望ましく、株主・株価対策にもなる。

宿輪 純一 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)

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しゅくわ じゅんいち / Junichi Shukuwa

帝京大学経済学部教授・博士(経済学)。1963年生まれ。麻布高校・慶應義塾大学経済学部卒。富士銀行、三和銀行、三菱東京UFJ銀行を経て、2015年より現職。2003年から兼務で東大大学院、早大、慶大等で非常勤講師。財務省・金融庁・経産省・外務省、全銀協等の委員会参加。主な著書に『通貨経済学入門(第2版)』『アジア金融システムの経済学』(日本経済新聞出版社)、『決済インフラ入門〔2020年版〕』(東洋経済新報社)、『円安vs.円高(新版)』『決済システムのすべて(第3版)』『証券決済システムのすべて(第2版)』『金融が支える日本経済』(共著:東洋経済新報社)などがある。

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