銀行の重荷になる「決済インフラ投資」のムダ 現場と乖離した「利益なき大型投資」の迷走

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大きい決済制度改革ではこの4月に「国債決済」がT+1(翌日)決済となり、「株式決済」は天皇陛下の即位関係で日程が延びて来年7月にT+2(翌々日)決済となる。8年ごとの「全銀システム」の改革も来年11月で第7次となる。このような対応には銀行をはじめとした金融機関は必須で対応しなければならない。これはシステムをはじめとした膨大なコストがかかる。しかも、コスト(予算)をかける割には、収益とは結び付かない分野なのである。要は、「強み」になりえない分野なのである。

海外の決済が優れているとむやみに進める向きもあることが問題の一つであるが(国によって事情が違う)、筆者は日本の決済インフラは即時他行振込が可能な全銀システムをはじめとして、世界最高峰のレベルであると考えている。しかし、振込などもどの銀行で行っても“同じく”即時に実行され、差がつかないのである。危機的な状況にある銀行、特に地方銀行などが、このような分野に莫大な予算を掛ける経営的な意味を見いだせないのではないか。

本当に必要な投資と言えるのか

銀行を退職してからも業界で仕事をしており、銀行の友人からの意見や筆者もそう思うのだか、最近、本当に必要なのか疑問の決済インフラ(決済システム)改革が続いている。このような案件への予算は本来、「株主」への説明責任もあり、銀行として対応を見送るべきものではないか。これは銀行経営への「副作用」ともいえるものである。

たとえば、この10月9日から全銀システムに新しいシステム「モアタイムシステム」が増設され、「24時間365日振り込み」が可能になる。現在の全銀システムの稼働時間は通常日は8時半から15時半である。たとえば、個人や法人で国内で深夜に振込をする方がどれだけあろうか。個人で夜、ネットで買い物をしても、クレジットカードで事足りて、振込はしないのではないか。

この案件に対して、銀行の対応は割れた。参加(清算)銀行144行のうち、参加するのは122行にとどまった。銀行でも都銀(メガバンク)や地銀などは参加するが、外国銀行やネット銀行は参加しない。経営的に不参加の判断をしたのである。ちなみに、みずほ銀行も参加しない。システム的には自行の新システム移行が最優先の経営課題であり、今回は参加を見送った。

ほかにも、銀行の友人から疑問を持たれている案件が結構ある。全銀システムで「EDI対応(愛称ZEDI:ゼディ)」が12月にリリースされる。商取引のEDIデータ(ファイル)が決済に添付できるようになる。決済は商取引の最終段階で、契約書や設計図などを送る企業がどれだけあろうか。現在の全銀システムでも、ある程度のデータを送れるがすでに”使われていない”。もし商取引に入るならば、最初の受注の段階から入ることが必要である。視点が違うのである。

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