《戦略講座》アップルのiPodを「ブルー・オーシャン戦略」で解説する

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《戦略講座》アップルのiPodを「ブルー・オーシャン戦略」で解説する

アップルの携帯デジタル音楽プレイヤー「iPod(アイポッド)」を知らない人は、もはやいないだろう。Windows 95の発売来、パソコンのプラットフォーム争いではウィンドウズ陣営に完敗した同社(当時はアップルコンピュータ、2007年1月に社名をアップルに改称)を、完全復活せしめた立役者である。2001年の発売来、急速に市場を席巻し、街行く人のイヤホンをトレードマークとも言える白色のものに塗り替えていった。

 iPodは、どれほど売れているのだろう。調査会社のBCN総研が発表している携帯デジタル音楽プレイヤーの機種実売ランキングを見ると、1位から14位までは全てiPodシリーズ。15位から17位に、ようやくソニーのウォークマンシリーズが登場する圧倒的な強さを見せている。同・調べによると2007年12月時点での日本の国内シェアはアップル54.8%、ソニー28.8%と、ソニーが追い上げを見せているものの、米国では依然、アップルが7割のシェアを握っているという。

 売れているのは、プレイヤーだけではない。2008年4月4日、アップルは、同社のオンライン音楽・動画配信サイト「iTunes Store」が、ウォルマートを抜き、全米第1位の音楽小売業者となったことを発表した。iTunes Storeは、iPodユーザーらがパソコン上で使用する音楽再生・管理ソフト「iTunes」を通じ、600万曲(日本では500万曲)からなる世界最大のミュージックカタログを約5000万人の顧客に向けて提供。2003年4月の開設来(開設当時の呼称は「iTune Music Store」、日本では2005年8月にサービス開始)、40億を超える楽曲を販売してきた。

 米国証券取引委員会(Seculity Exchange Commission)による電子開示システム「EDGAR」で確認すると、2007年のアップルの売上高240億ドル、純利益34億9600万ドル(売上高純利益率14.6%)に占めるiPodのシェアは、iPod本体の売上高83億500万ドルに関連売上高24億9500万ドルを合算すると、売上高全体の45%にも達する。わずか5年前、2003年の同社売上高62億ドル(純利益6900万ドル、売上高純利益率1.1%)に占めるiPodのシェアは6.14%(iPod本体の売上高3億4500万ドル、関連売上高3600万ドル)であるから、パソコン「Macintosh」シリーズを中核としていたアップルの事業構造が、極めて短期間に大きく転換したことは明確に見てとれるだろう。

■「ブルー・オーシャン」を引き出す「戦略キャンパス」と「4つのアクション」

 さて今回は、iPodの成功を「ブルー・オーシャン戦略」にあてて説明してみたい。ブルー・オーシャン戦略は、前回紹介した「デルタモデル」よりは知名度も高く、多くの経営者が実践しようともしているため、詳細を知っている人も多いだろう。

 『ブルー・オーシャン戦略』(W・チャン・キム、レオ・モボルニュ・著、ランダムハウス講談社・刊)によると、(ブルー・オーシャン戦略は)「ライバル企業を打ち負かそうとするのではなく、むしろ、買い手や自社にとっての価値を大幅に高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にする」こととある。しかも、競合を大きく凌駕する全く新しい技術の投入や、市場参入のタイミングによって勝機を取るのではなく、差別化と低価格化を同時に満たし、顧客にとっての「バリュー・イノベーション」を実現すれば、従来品の延長線上にあるような技術・商品であっても広いビジネスの地平を切り拓けるものとしている。

 アップルは、ソニーや松下電器産業などが携帯デジタル音楽プレイヤーの技術・デザイン競争に明け暮れているそのときに、後発で性能的には大差のない商品(むしろ低いという見方すらある)を投入して圧勝した。そして今も圧倒的なシェアを維持し、高収益を上げている。まさに、血みどろの競争が繰り広げられている場(レッド・オーシャン)を尻目に、未知の市場空間(ブルー・オーシャン)を切り拓いたと言える。

 ブルー・オーシャン市場を自社のものにできれば素晴らしいことは理解できる、しかし、どうやって切り拓けばいいのか。アップルの拓いた市場と、ソニーや松下が凌ぎを削った市場は具体的に何を異にしていたのか。

 ブルー・オーシャン戦略では、ブルー・オーシャン市場を築きたい人のために「戦略キャンパス」、「4つのアクション」と呼ぶツールを用意している。順を追って説明しよう。

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