「未婚男性は悠々自適」という大いなる誤解 可視化されていない「独身税」の重荷

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興味深いのは、二人以上の家族世帯の場合、物価上昇に敏感に反応している点です。物価が大きく上昇した魚介類・果物・菓子などはすべて支出減で、節約の意思が見られます。一方、単身男性は値上がりしている肉類や野菜もむしろ大きく消費額が伸びていますし、なぜか、それほど物価上昇が大きくない油脂・調味料が44%も増えています。

逆に、おにぎりや弁当などの調理食品はそれほど伸びていません。これらは、もしかするとソロ男たちの内食化や健康志向などと関連しているのかもしれません。ちなみに、健康志向とは逆行する菓子類も伸びていますが、ソロ男の菓子好きは筋金入りであり、そこを削減する意識は薄いといえるでしょう。

推測するに特にソロ男たちは家計簿をつける習慣がなく、物価上昇に対してあまり頓着していないことが考えられます。とはいえ、手取り収入が減っているのは現実であり、そこでどうするかというと、もっとも支出している分を削減するのです。

ご覧のとおり、単身男女とも外食費は約2割以上も減少しています。『外食費は1家族以上!独身男は「よき消費者」だ』でも紹介したように、特に単身男性の外食費は、一人で一家族分以上実額で使っています。それは今も変わりませんが、10年前より消費額は抑えめになっています。

よく考えずに日々の食費を使っているものの、月末になるとどうも手持ちが少ない。仕方なく、もっとも金額の大きい外食を削っているのでしょう。これでは、月3万円のお小遣いでランチは立ち食い蕎麦一択になっている既婚のお父さんと境遇としては変わらないと言えます。

ちなみに、単身男性の場合、食費以外でも2007年と2017年を比較した場合、被服費や交通通信費は2割減、教養娯楽費は3割減です。決してアイドルやアニメ、旅行や趣味のおカネを使いすぎているわけではありません。

将来的に「消費の主役」は独身に

独身人口は確実に増加します。単身世帯以外も含む全独身消費市場は、私の試算では、2020年に100兆円を超え、2030年には家族の消費額を抜きます。今後は独身の消費力が市場経済を左右します。

そんな未来経済の主役になるべき多くのソロモンたちが、諸々の要因からその消費行動を抑えざるをえない今の状況は、景気面からも決してよいとは言えません。多くのソロモンたちは、全体的に収入が伸びない中、税金や社会保障費の控除もなく、物価上昇や消費税率アップなど消費に関わる費用もかさみ、とても「独身貴族」などと呼べる豊かな生活は送れてはいません。それどころかギリギリの暮らしを強いられていると言えます。

所得が大幅に増える見込みのない中、来年に迫った消費税率アップが、彼らにトドメを刺すことにならなければいいのですが……。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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