ブラック校則問題で裁判所がお茶を濁す事情

人権を侵害し尊厳を踏みにじる「学校の常識」

児童の権利に関する条約12条は「締約国は、自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保する。この場合において、児童の意見は、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする」と規定している。

髪型や服装の規制は明らかに「児童に影響を及ぼす事項」であり、子どもには「自由に意見を表明する権利」が認められなければならないし、その意見は「相応に考慮」されなければならない。校則を一方的に押し付けていいものではないということは、児童の権利条約からも明らかだ。

校則は、当事者である児童生徒の意見を聞きながらつねに見直されるべきものである。しかし、実際に校則について児童生徒の意見を反映させようとする学校はほとんどないと言ってよい。

裁判所は生徒の訴えを認めなかった

校則をめぐっては、これまでいくつもの訴訟が起きている。

よく知られている古い判例としては、熊本県公立中学校丸刈り訴訟(1985年確定判決)がある。

この裁判では、公立中学校で丸刈りを強いられた生徒側(原告)が、近隣の公立中学校に丸刈りの校則がないのに自分の通う学校では校則で強制されるのは、居住地等による差別であり、法の下の平等を保障する憲法14条に違反すると訴えた。

また、法定の手続きによらない身体の一部の切除の強制は憲法31条(適正手続きの保障)違反、個人の感性、美的感覚あるいは思想の表現である髪型の自由を侵害したので憲法21条(表現の自由)違反だという主張も行った。

しかし、熊本地方裁判所はこうした主張を認めず、「服装規定等校則は各中学校において独自に判断して定められるべきものであるから、……合理的な差別」であり、「髪型が思想等の表現であるとは(特殊な場合を除き)見ることはできず、特に中学生において髪型が思想等の表現であると見られる場合は極めて希有であるから、本件校則は、憲法21条に違反しない」と判示した。

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