人は思っているほど「ありがとう」と言わない

やってもらうのは結構当たり前

人が「ありがとう」と言うことは、思ったよりずっと少ないことがわかった(写真:Graphs/PIXTA)

「ありがとう」――。これは外国語を学ぶとき、まっさきに教わる言葉であり、親が子どもに頻繁に言わせようとする言葉だ。感謝の気持ちを口に出して表現することは、コミュニケーションの基本中の基本というわけだ。

ところが人が「ありがとう」と言うことは、思ったよりずっと少ないことが、世界の日常言語を調べた新しい研究でわかった。

頼み事に対して「ありがとう」はあまり言わない

5月に英王立協会発行の学術誌ロイヤル・ソサエティー・オープン・サイエンスに発表された研究論文『感謝の表現における普遍性と文化的多様性』によると、人は日常生活で何かを頼まれると、ほぼ例外なくその頼みを聞いてあげるけれど、それに対して「ありがとう」と言われることは20回に1回程度だという。

人間の本質なんてそんなものだ、とか、マナーの悪い連中が増えている証拠、という声が聞こえてきそうだが、研究者たちはこの結果を喜んでいる。

「私たちは基本的に、互恵的な人間関係がデフォルトだと思っている」と、研究チームのリーダーを務めたシドニー大学のニック・エンフィールド教授(言語学)は言う。「つまり、誰かに助けを求めたら、助けてくれるのが当たり前だと思っている」。

エンフィールドらの研究チームは、言語を思考の表現方法ではなく、社会的交流の手段として研究している。これまでに「はぁ?」という言葉の普遍性を調べたこともある。会話の途中で相手に発言の明確化を求める表現だが、実に31もの言語に類似表現があることがわかった。

今回の研究対象となったのは、5大陸8言語(英語、イタリア語、ポーランド語、ロシア語、ラオス語、エクアドルのチャパラ語、アボリジニのマリンチパサ語、ガーナのシウ語)。これらの言語を話すコミュニティーで、家庭内や近隣住民が集まる場所に無人カメラを設置して、知り合いどうしの日常的な交流を観察した。

感謝の表現はストレートな「ありがとう」だけでなく、英語なら「グッドジョブ(ご苦労さん)」とか「スウィート(ありがたい)」といった表現も感謝の気持ちを示す言葉としてカウントした。

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