人は思っているほど「ありがとう」と言わない

やってもらうのは結構当たり前

英語や日本語の話者にとって、「ありがとう」と言うことは基本中の基本に思えるかもしれないが、「ありがとう」に直接該当する言葉がない言語は多い。確実なデータは存在しないが、おそらく現在世界で話されている6000~7000言語のほとんどがそうだろうと、エンフィールドは言う。

その多くは、話者のほとんどが知り合い同士の小さなコミュニティで話されている。「こうした言語では、礼儀正しさが重視される無個性のやりとりは存在しない」。

頻繁に言うことは侮辱とたとえる言語もある

「ありがとう」と言うことの社会的意味合いも文化によって異なる。一部の言語では、「ありがとう」に該当する表現は、本当に重大な出来事(命を救ってもらったときなど)のためにしか使われない。頻繁に「ありがとう」と言うことが、奇妙あるいは侮辱とさえ受け止められる言語もある(南アジアの言語がそうだ)。

「ありがとう」の研究は、言語の使い方に関する思い込みと現実のギャップを明らかにしたと、エンフィールドは言う。だからといって、子どもに「ありがとうと言いなさい」と教育するのをやめるべきだということではない。

実際、エンフィールドらの研究では、感謝の言葉が形式的に使われる可能性があるビジネス環境と、子どもが含まれる交流は除外されている。子どもが含まれると、その言語文化の全体像が見えにくくなる可能性があると考えたからだ。

「親は、子どもが外で礼儀正しく振る舞うように、家庭でも『お願いします』とか『ありがとう』と言うようしつけることが多い。ところが、ひとたび子どもがいなくなると、大人どうしでは全然そういうことを言わなくなる」

(執筆:Jennifer Schuessler記者、翻訳:藤原朝子)

© 2018 New York Times News Service

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