「ピッチに立てない時間」が選手を強くする 読書するサッカーJ1「点取り屋」の失敗哲学

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――お話を伺っていると、とても「前向き」な印象を受けます。子どものときからそうだったのでしょうか。

僕は、昔から、できなかったことができるようになるのがうれしいんですよね。今でも覚えているのは、少年時代、当時の監督から「ボールの横を蹴るとバナナシュート(バナナのような弧を描いて曲がるシュート)が打てるんだよ」と教わった時のことです。

壁に向かって何度も何度も蹴って……初めて成功したとき、ものすごくうれしかった。この時の喜びが原体験となっていて、今でもずっと成長したい、できるようになりたいと思っているんです。

成長すれば、まだまだやれることが増える。「無知の知」と言いますけれど、昨日まで知らなかったことを、また知ることができれば、どんどん成長していける。サッカーをやっている人は、みんな少なからず僕のような気持ちを持っているんじゃないでしょうか。好奇心と、成長することの喜びですね。

あきらめた先につかむものがある

『シュー・ドッグ』には「天職を見つけろ」と書かれていますが、僕はたまたま4歳の時に見つけたのがサッカーでした。ただ、僕の場合は、たまたま運よく見つけただけで、探したって見つからない人だっているんだと考えると、恵まれている部類なんだと考えるようにしています。特に子どもたちには「熱中することがいい!」とか「夢を追いかけろ!」なんていうことは言えない自分がいるんです。

「夢を追いかけろ」と言うことは簡単なんですよ。だけど、いざスポーツの世界に入ると、夢なんていくらでもあきらめなければならないものなんです。そういう仲間をたくさん見てきましたし、僕自身も若い頃に夢見たものとは程遠いキャリアです。でも、僕にはこの道しかなかった。

「努力は報われる」「あきらめるな」とみんな言うけれど、それも違うような気がします。僕も、あきらめたことがあるんですよ。コンサドーレ札幌(現 北海道コンサドーレ札幌)へ行く前に、1カ月間だけ海外のトライアウトに挑戦したんです。でもダメで……撤退する最後の日、デンマークの田舎町にいたんですが、猛烈にムシャクシャして、フィル・ナイトのように走ったんですよ。霧が出ていて、その霧と自分のふがいなさが重なって、泣きながら。

あの時の僕には、今の人生は想像できなかった。でも、海外をあきらめてコンサドーレに来たこの5年間で、小野伸二さんが来て、稲本潤一さんが来て、そして優勝できて。当時は考えられないほどのキャリアアップにつながっています。あきらめた夢だけど、あの挑戦は、失敗のなかでもすごく良い経験だったのだと思っています。

僕には、「今を生きる」こと以外できません。でも、いつか振り返ったときに、点と点が線になっているものだと思っています。点は、つねに意識しているわけではないけれど、その瞬間を全力で生きていけば、結果的につながっていく。そのためには、自分の持っている最大値をその瞬間に出し続けること。そして、その原動力は「つねに成長したい、知らないことを知りたい」という気持ちです。

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