ドリブルに勝機を見いだした男の果てない夢 独自理論を確立した岡部将和氏が語る哲学
「ドリブルデザイナー」という職業をご存じだろうか。
直感的に訳すと「ドリブル専門の指導者」ということになるのだろうが、もちろん、ただのドリブル指導者では、ない。一人ひとりのプレースタイルや特徴に合ったドリブルを、理論立てて説明し、実践で使えるようになるまでデザインすることを使命とする指導者のことだ。
そして、私が知る限り、日本中で、いや世界中で、ドリブルデザイナーと名乗れるほどに確立したドリブル理論を持つ人間は、一人しかいない。
岡部将和。
彼が、華麗なステップと卓越した技術で、腕に自信のあるサッカープレーヤーたちをドリブルで何度も抜き去る動画を見たことがあるという人も多いことだろう。最近では、ネイマールやロナウジーニョと共演したり、サッカーワールドカップロシア大会の日本代表に名を連ねる乾貴士や原口元気、宇佐美貴史らに、自らのドリブル理論を伝授している様子が公開されて大きな話題となった。
ようやく身につけた、本質を見抜く力と言語化する習慣
自ら配信する動画が8000万回もの再生回数を超えるなど、いま世界中で最も注目を集めている指導者だけに、もしかしたら、岡部のことを、生まれつき才能を持った天性のドリブラーだと思い込んでいる方も多いかもしれない。だが、岡部は自らを、”努力をして、技術を身につけてきたタイプ”と評している。
岡部は、幼い頃、喘息がひどく入退院を繰り返す病弱な子どもだった。身体が小さく、線も細かったため、サッカーを始めた小学生の頃から、常にフィジカル的なハンデを感じながらプレーしてきた。
それでも岡部は俊敏な動きとボール扱いに長けた選手だったため、在籍していたチームでは、常に上の学年に交じって活躍、中学時代に在籍した横浜マリノス(現横浜F・マリノス)のジュニアユースでも、入団当初から上の学年に交じってプレーした。
当時のチームメイトには、藤本淳吾(現ガンバ大阪)や栗原勇蔵(現横浜F・マリノス)ら、圧倒的な能力を持つ選手がいたため、彼らにパスを供給する役割を担っていたという。だが、年を追うごとに、フィジカル重視のチーム方針の中で、岡部の出場機会は減っていってしまう。
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