ドリブルに勝機を見いだした男の果てない夢 独自理論を確立した岡部将和氏が語る哲学

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岡部は、フットサル選手として、自らの特徴を遺憾なく発揮した。交代が自由にでき、かつゴール前での攻防が多いフットサルでは、岡部の特徴は一層際立った。「チームが点を取りたいときに使われる選手」として、国内だけでなく、海外でも活躍した。

こうして、フットサル選手としてのキャリアを積んでいった岡部だが、彼の真価が本当の意味で発揮されたのは、指導者としてだった。Fリーグで活躍する選手の多くは、トップレベルでプレーしながらも、サッカーやフットサルのスクールでコーチをしたり、フットサルクリニックを開催しながら収入を得ている。現役時代の岡部は、多くのフットサル選手と同じように、指導者としての顔を持っていた。そして、その頃から、指導することに大きな喜びを感じるようになっていた。

「身体が細く、身体的に恵まれなかった自分でもこれだけできることがわかった。もし身体に恵まれた人が、自分が持っているドリブルの理論を身につけたら、どんなにすごい選手になるんだろう。そう思ったら、ワクワクしてきたんですよね」

大好きなドリブルを中心に指導の道を歩み始めた岡部だが、何気なく自らが実践しているドリブル動画をSNSに投稿したことで、岡部の人生が一気に動き出した。周囲の反響が想像以上に大きかったのだ。さらに投稿を重ねていくと、その反響は、自分の想像をはるかに超え、瞬く間に拡散されていった。自分が積み上げてきた理論が、世の中に広く求められていることを知った岡部の人生は、こうして引退後に大きく花開いていったのだった。

岡部のドリブル理論の根底にあるもの

岡部のドリブル理論は、冒頭でも触れたように「誰でも使えて、誰でも抜ける」ものであり、それを自ら公言もしている。人によってドリブルの特徴も身体的な特徴も異なる上、相手もいるのに、どうしたら抜くことができるのだろうかと疑問に思う方も多いだろう。

独自のドリブル理論を構築した岡部氏(筆者撮影)

「自分がどの状態になったら相手ディフェンダーに勝つことができるかを知ること、相手との距離や身体の向き、重心などの状態を見極め、さらに、自らドリブルを仕掛けながら、自分が勝てる状態を作り出すことができれば、理論上は、99%ドリブルで抜くことができます」

まさに“彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず”というわけだが、中学生の頃から続けてきた本質を見抜き、言語化する能力に長けている岡部だからこそできる指導だと言えるだろう。

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