帰国して最初の食事はサツマイモの葉っぱ
コートジボアールの国境を越えたバスは、夜を徹してジャングルの一本道を走っていた。
「もうここはニンバね」
私の隣の黒人女性に向かって、前の席のちょっと年上の黒人女性がわざわざ振り返って話した。声をかけられた女性は黙って頷いて外を見つめ、代わって反対隣の男が割り込む。
「このあたりで親戚が殺された。友達もたくさん死んだ」
堰を切ったように、まわりの座席から続々「殺戮の悲劇」が吹き出す。車窓からは闇しか見えないが、そこは長い長い内戦が始まるきっかけの場所なのだという。もう20数年前、ここからリベリア全土へと戦火は広がった。バスの乗客のほとんどは、そんな内戦から他国に逃れていた難民たちだ。戦争が終わった母国へ戻る20人ほどのリベリア人。ほかにガーナ人の学校の先生や、行商人だという謎のナイジェリア人もいた。
ニンバを抜けて夜が明けると、バスは「飯を食え」と言わんばかりに、3~4軒の屋台が並ぶ小さな集落に停まった。なにかを口にするのは2日ぶりだ 。店にはきっとそれしかないのだろう、「ポテトリーフ」と呼ばれるものが差し出され、運転手たちが食う。サツマイモの葉と唐辛子、スパイスをグツグツに煮込んだものが、ぱさついたコメにぶっかけてあった。手で混ぜながら皿飯を食う。川の水を汲んできて飲む。
「俺はいらん。もうここはリベリアだ。奴らは全員人殺し。毒が入ってるかもしれないから気をつけろ」
ナイジェリア人はなにかを警戒し、食べずに離れて見ている。横ではやっと祖国に帰れたリベリア人たちが、一気にポテトリーフを平らげていた。
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