「ピッチに立てない時間」が選手を強くする 読書するサッカーJ1「点取り屋」の失敗哲学
僕は昔は、自己啓発本や、ハウツー本をたくさん読んでいたんです。でも、結局は人それぞれであって、そこに答えが書いてあるわけではありませんでした。こういった、世の中に影響を与えた方の自伝から疑似体験できる本は、自分のなかで参考になるところも多くて、いい読書の時間になると思っています。
失敗からどう学ぶか
――フィル・ナイトについてはどのように感じられましたか?
僕とフィル・ナイトでは、すごく重なる部分があるとも感じました。僕のベースにあるのは「失敗からどう学ぶか」という姿勢なんです。彼も、自分や、ナイキ創業メンバーのことを、「負け犬」と総括していますよね。
僕は、エリートとはまったく逆の生き方をしてきました。振り返ってみると、成長できたのは、いつも壁にぶつかっているとき。ケガもそうですね。読書からいろいろな考え方を学ぶようになったのも、ケガがきっかけです。
まったく練習できない。なら、どのサッカー選手よりも本を読めば、ケガが治ったときに、また新しい自分が存在するんじゃないか、と考えるようになったんです。
試練にぶつかれば、もがきますし、その時はつらい。でもそんなとき、「また成長できるチャンスなんだな」と思えるところもある。「ピンチはチャンス」と言ってしまうと、言葉としては軽い気がしますが、自分の中では、壁や挫折を経てこそ学ぶことができる。経験からしか学べない。それが自分の人生で知った真理なんです。
もう1つ共感したのは、フィル・ナイトには「終わり」を見る心理があるということです。アスリートはみんな同じだと思いますが、やはり「あと何年サッカーできるのか」と終わりを意識するところがあるんです。僕の場合、18歳の時と現在とでは、1日の重みが明らかに違います。だから、短い期間で目標を立ててしっかりやろうと考える。1日の有限性を考えるんです。
フィル・ナイトの働きぶりも、そこに通ずるものがあります。アスリートをやっていたからこそかなと思いますし、「終わり」を知っている人間は強いんだとも感じます。
「終わるかもしれない」という気持ちは、不安につながるのではないかと聞く人もいます。でも不安って、過去とか未来を思うことから来ると思うんです。過去にベストを尽くしていなかったからとか、将来どうなるかわからないから、ということです。それを克服するのは、今をしっかり生きることだと思います。
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