コーヒー飲み放題「定額制カフェ」の損得問題 コンビニコーヒー派が検討する価値はあるか

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そんな野暮な計算ばかりしていてはいけないのかもしれない。コーヒーに詳しい人からお叱りを受けそうだ。

そもそも、こうしたカフェはただコーヒーが飲み放題になるというメリットだけを推しているわけではない。オフィスを持たないノマドワーカーや、営業マンがお客と打ち合わせする場として、飲み物付きスペースを提供するのもカフェの役割でもある。つまり、月額1万円以下で、東京都内にサテライトオフィスをキープしているのだという考え方に立てば、価格の妥当性も変わってくる。

筆者もよく取材や打ち合わせに都内ホテルのラウンジを利用するが、コーヒー1杯が1000円近くするものだ。そして、周囲には商談中と思しき面々がずらりといる。もし、ビジネスでこれを週2回やっていれば、自分のコーヒー代だけでもう8000円になる。

ちなみに、東京都内のコワーキングスペースの利用料をいくつか見てみると、フリーアドレス(机のみ利用)で、月額9900円、1万円、2万円以上、また別途入会金が必要な場合もある。ワークに必要な設備の充実度は当然こっちのほうが優れているが、普段からスタバで資料まとめ等の作業をしている人で、定額制カフェがあるエリアが自分の行動範囲と合致するなら、悪くない選択となるだろう。ただし、店によって立地や広さ、普段の混雑具合はかなり違うので、それも合わせて考える必要ありだ。

サブスクリプションサービスがどんどん増える理由

月額制を取り入れる店舗側のメリットについても考えてみよう。

まず、こうしたサービスに興味を持った人が、一度は現地を見に訪れるだろう。会員になる前にコーヒーの味を確かめに来るはずだからだ。これは立派な来店動機になる。次に、晴れて会員になった場合は、せっかく月額会費を払っているのだから元を取ろうと足しげく通う。ついでにそこで軽いランチをとったり、3時のおやつにスイーツでも食べるかもしれない。その分は月額にはカウントされていないので、店にとっては新たな売り上げになる。

さらに、会員になっていることをちょっと自慢したくなり、友人を連れてくるかもしれない。その友人のコーヒー代は別料金だ(ここは店のシステムによって少々違う)。気になる相手を誘う口実にも使えそうだ。その場合、コーヒーだけじゃなくアルコール類を楽しんだりという流れにもなりやすい。ますます客単価が上がるというサイクルだ。

それに、いったん月額会費を支払うことが習慣化すると、やめる手続きが面倒になるという側面もある。定額制カフェとは別の話だが、アプリなどの有料会員サービスになっていて、そのまま習慣化し月500円程度の会費を延々と払いつづけている人は多いはずだ。

当然ながら、先払いしたおカネは、その後の利用状況にかかわらず取り返すことはできない。月額会員になったあとはコーヒーを1杯飲んでも10杯飲んでも同じことだ。「この価格に見合う使い方ができるか、価格分のサービスを受けられるか」は、会費を払う前にシビアに検討しなくてはダメなのだ。

コーヒーを好きなだけ、もしくはさまざまなドリンクを何杯も飲みたいならファミレスのドリンクバーに行くという選択だってある。定額制がトクなサービスか否かは、自分がコーヒーそしてカフェに求めるものによって判断したほうがいい。なお、どうせならコンビニ各社がこの定額コーヒー会員制度を打ち出せば面白い気がするのだが、どうだろう。

なお余談だが、コンビニコーヒーを愛している筆者が、カフェのこだわりのコーヒーを飲んだら感動するかもしれないと出向いてみた。あくまで個人の感想だが、その体験からは美味しいコーヒーであればあるほど、ぐいぐい何杯も飲めないものだと感じた。飲み放題と言われて調子よく何杯でも飲めるのはビールくらいかもしれない。そのあたりもぜひ、自分の舌で確かめたうえで検討してほしい。

松崎 のり子 消費経済ジャーナリスト

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まつざき のりこ / Noriko Matsuzaki

20年以上にわたり『レタスクラブ』『レタスクラブお金の本』『マネープラス』などのマネー記事を取材・編集。家電は買ったことがなく(すべて誕生日にプレゼントしてもらう)、食卓はつねに白いものメイン(モヤシ、ちくわなど)。「貯めるのが好きなわけではない、使うのが嫌いなだけ」というモットーも手伝い、5年間で1000万円の貯蓄をラクラク達成。「節約愛好家 激★やす子」のペンネームで節約アイデアも研究・紹介している。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)、『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない』(講談社)、『定年後でもちゃっかり増えるお金術』(講談社)。
【消費経済リサーチルーム】

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