社員の個人的犯罪まで社長が謝罪する違和感 「謝りすぎ」が示す日本社会の息苦しさ

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2つ目の事案は、少し前になるが、2017年11月14日、「つくばエクスプレス」を運営する首都圏新都市鉄道が、南流山駅で下りの列車が定刻より20秒早く発車したとして、その日のうちに謝罪のプレスリリースを発表したというものだ。

出発予定時刻は9時44分40秒だったが、列車は9時44分20秒に発車した。この件でお客様からの苦情等はなかったというが、発車メロディや「ドアが閉まります」のアナウンスが発車後に流れるという事態になったため、「お客様には大変ご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます」と陳謝した。

ルール違反であり、もちろん看過できるわけではない。しかし、この事案は、海外では驚愕をもって受け止められ、多くのメディアに面白おかしく取り上げられた。そもそも、海外では電車が定刻に発車することのほうが珍しい。筆者もアメリカやイギリスでの生活で、何度となく泣かされた。突然、停車すべき駅を飛ばしたり、何の前触れもなく運休する地下鉄。週末、駅に行くと、今日は1日電車が来ません、などということもざらだ。

停留所に人が待っていようが満員でもないのに、平気で無視して行ってしまう路線バスもある。長距離バスに乗って旅した時は、突然、バスが故障し、高速道路の途中で、足止めを食らったが、代替えバスを出すでもなく、のんびり修理するのを8時間待たされるということもあった。

それでも、不思議なのは「誰も大して怒らないこと」。こんなものだろう、と平然としているのだ。日本であれば、駅員に詰め寄り、怒りだす人もいそうなもの。そもそも日本ではこうした「サービス」への期待値が海外に比べて圧倒的に高い。いや、高すぎるところがある。

「弁当注文」で謝罪会見

3つめの事案は、神戸市職員が勤務中に弁当を注文するために、職場を離れる「中抜け」を繰り返し、減給処分されたというものだった。

大阪の放送局ABCテレビによると、神戸市水道局の64歳の男性職員は、勤務時間中に近くにある飲食店に弁当の注文をするため、3分程度の中抜けを半年間に26回したという。結果、この職員は半日分の減給処分となったというが、驚いたのは、6月15日、神戸市の水道局の課長ら4人が並んで会見を開き、深々と頭を下げ、「このような不祥事が生じ、大変遺憾。申し訳ございませんでした」と謝罪をしたことだ。

半年間に26回ということは1カ月4回、つまり1週間に1回程度、3分間の中抜けということだが、これがダメなら、たばこを吸いに喫煙所に行ったり、就業時間内に居眠りをしたり、業務に関係のないおしゃべりをすることも処分の対象にあたるということにならないだろうか。

次ページこうした謝罪会見を開くのは…
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