「海外就活」が当たり前の時代がやってきた! 岡崎仁美「リクナビ」編集長×森山たつを対談(1)
海外で一度缶詰になって一皮むける体験が必要
岡崎:私が所長を務める「就職みらい研究所」の研究員が、海外インターンシップのサポートをしているのですが、今の学生の関心の高さには驚かされます。昨年、経済産業省が主催した海外インターンシッププログラムの企画・運営をリクルートが受託したのですが、大々的に広報したわけではないのに、ものすごい数の応募がありました。意欲が旺盛で学力の高い優秀な人が殺到し、選考が大変だったと聞いています。
インターンとはいえ、約2週間、海外の企業で缶詰になって、まったく知らない人たちと仕事をしながら過ごすことになるわけです。今まで体験してこなかった仕事の修羅場もあるでしょう。参加した学生の応募動機は、そういったグローバルな経験をしておかないとまずいという危機感を伴ったものが多かったようです。
森山:確かに、学生にとって何かに追い込まれる経験って、テストや受験くらいしか、それまでなかったのかもしれませんね。試験は答えも日程も決まっているので、できようができまいが、その期日が過ぎてしまえばすべては水に流れる。
でも、仕事はそういうものじゃない。毎日、危機は押し寄せるし、その問題を解決しないと次に進めないから、なんとしてでも主体的に終わらせなければいけない。だから、インターンに参加する学生が「ああ、仕事って思っていたのとまったく違うんだ」ということを実感し、みんなで問題を解決しながら小さな試練をくぐり抜けるという体験は、将来、大きな強みになると思います。特に海外となれば、なかなか逃げ場がないですからね。
岡崎:おっしゃるとおりです。逃げ場がない状態に自らを追い込むという点で、海外インターンシップを通じて国内では得られない体験ができた、一皮むける経験ができたと言う学生もいました。
ただ、印象深かったのは、プログラムの内容や派遣先の会社のことだけではなかったことです。普段の観光では行かない場所に行くと、テレビでしか見たことのないストリートチルドレンが、本当に目の前で物乞いをしている。ビジネス街のさらに裏路地にあるような場所に行った方もたくさんいる。そのような外国の実態に衝撃を受けた、という感想も上がりました。旅行や短期留学ではなかなかできない海外体験だったようです。
森山:確かにバンコクで王宮の周りだけ見ても、日本にもありそうなテーマパークを体験するようなものです。オフィス街があるスクンビット通りはものすごくきれいですが、そこから1本路地に入るだけで裸で歩く子供が目に入ってきます。
日本の都会だと、多少、奥まったところに行っても商店は続いていて、住宅街も本当にきれいに清掃されていますよね。でも海外に行くと、5歳くらいの子供が道端で商売なんかをしている。それを見ると、「俺、22歳まで何やってたんだろう」って考える気がします。できれば大学生よりも高校生や中学生といったもっと若い段階で、一度そういった光景に出会ったほうがいいんじゃないかと思うのです。