81歳社長が率いるMマートの次なる事業構想 村橋孝嶺社長にビジネスモデルを聞く
村上:今まで価値付けできなかったものは本当に価値がなかったわけではないわけですね。
村橋:そう、価値はあります。農家が自立して、一次産業が栄えないと国は経済的に没落しますよ。九州ほどの面積のオランダが、ずっと先進国でいるのは農業をきちんと守っているからです。日本は農業も漁業もほったらかしです。利権のかたまりですね。誰かがそれを壊していかないといけないわけです。
強きも弱きも公正に競争すれば業界はまだ成長する
小林:食品流通の世界において村橋さんの存在感はどんどん大きくなってきていると思います。あくまでも、業界の成長や変革を優先される姿勢は素晴らしいと思う一方で、御社のビジネスだけを見たときに、売上拡大の機会を逃しているのではないかという見方もあるのではないでしょうか。
村橋:よく言われます。当社の場合、買い物カゴから買われる方は全体の取引の10分の1以下です。直接取引が10倍以上あります。アナリストには「機会損失ではないか?」と言われますが、それは違うと考えています。これを機会損失と捉えていては、視野が狭くなってしまいます。もっと大局を見て、業界全体の分母が大きくなれば、結果として当社の売上も大きくなると考えています。
朝倉祐介(シニフィアン共同代表):分母、すなわちマーケット全体にまだ成長の余地があるということですね。
村橋:はい。三菱食品だけで2兆5000億円。国分でも1兆5000億円。アクセスが2兆円くらいです。他に8000億以上の会社が5社くらいあります。
まだまだこの業界にパイはあるわけですよ。でも、今まではクローズで、既得権益や既存の構造にがんじがらめになっていただけです。オープンなマーケットプレイスを作れば組織が大きいとか資本金が大きいは関係なくなります。大きいところも小さいところも、業界全体が大きくなる方向に向けて、一緒にやればいいじゃないか、と思っています。
小林:今後の成長については、どういったシナリオを想定されていますか?
村橋:まだまだ本業だけでも成長できると思いますが、ネットビジネスで考えないといけないのは、いかに有効な情報を、売り手と買い手に提供できるかですね。そこで必要なのがデジタルマーケティングの発想です。流通業界の人はまだデジタルマーケティングの本質理解していないと思います。
「この商品をどうやってメールマガジンで売るか」という発想では昔からある販促と変わりません。ただ手段がインターネットになっただけですね。