81歳社長が率いるMマートの次なる事業構想 村橋孝嶺社長にビジネスモデルを聞く
村橋:実は、経営不振の窯元だったんですよ(笑)。背に腹は変えられないと数万枚の皿や丼鉢を出してくれました。そうしたらあっちもこっちも、と他の窯元も雪崩を打つように続きました。今ではおそらくMマートがいちばん食器を扱っていると思います。
村上:倒産しかけたところから始まったというのは面白いですね。
村橋:組合が強くて、なかなか崩せなかったのですが、1軒目が崩れたら、その組合の他の窯元がどっと出品してくれました。本当は安くてもいいから売りたかったんですよ。
村上:なるほど。逆に組合があったことが一気に広がる素地になったわけですね。
不良在庫がMマート出品で化ける理由
小林:出店とは別に、「即売・ソクハン」といった出品方法もあるようですが、この領域ではどういったビジネスモデルを仕掛けていらっしゃるのですか?
村橋:即売やソクハンでは、出店料を貰わない代わりに、売れたらマージンを頂いています。それが自動的に低価格での出品を担保する仕組みになっています。
小林:そもそも、どのようなニーズを感じ取られてこのようなビジネスモデルにされたのですか?
村橋:メーカーも問屋も何十トンと不良在庫を持っています。先日、廃棄物の横流しが事件になりましたが、これは昔から問題の素地があって、飲食店側としても迂闊に廃棄処分も頼めません。自分のところで完全に廃棄処分しないと信用に関わるわけです。したがってお金もかかります。
廃棄直前のものは、原価を割ってもいいから少しでも捌いて現金にした方が利益になります。日本人特有の「もったいない」精神もあります。そこで、「廃棄処分をやめてとにかく、うちに出品しませんか」と呼びかけました。大手スーパーでは賞味期限まで半年を切ったものは売れません。中規模以下のスーパーでも3ヶ月を切ると売れません。でも、Mマートでは1ヶ月を切っても売れます。賞味期限が短くても、在庫を抱えずにすぐに調理して提供する飲食店等では需要があるわけですよ。
自前開発が競争力の源泉
小林:ここから、御社の競争力について伺いたいのですが、まずは、競合するようなBtoB型のプラットフォームサービスは他には出来なかったのですか?
村橋:実は2000年前後には、かなり乱立していました。私が知っているだけでも一部上場企業の100%子会社が10社はありました。ところがそこの社長が私のところに来て「うちも出店させてくれ」と言うわけです。
同様の話が何社からもありました。同業者なのになぜかと問うと「この業界で売れているのはMマートさんだけだ」と言うのです。なぜ彼らの試みがうまくいかなかったのか聞いていくと、資金があるからといって大手に依頼して5000万円かけてシステムを作るようなことをしていたんですね。大手相手では、ちょっと更新するだけで30万円かかることもあります。
私たち、流通の仕事は毎日改善させないと生き残っていけません。しかし、更新の度にお金がかかるとなると、どうしても頻繁にシステムを磨くことができなくなる。すると、売れなくなるわけです。うちは自前で作ったことが良かったわけですね。