世界中で急激に進む少子化にどう向き合うか

日本は先に対策を積み上げて発信できる

サブサハラを除く世界の多くの国が、今後比較的短期間に少子化の波に洗われる。わが国は少子高齢化の進行が速いが、韓国ほど劇的ではなく、中国との比較でもその速度に大差はない。多くの国々が、遠くない将来、少子化問題に直面する。もし、わが国が少子化に適応した社会政策を成功させれば、世界の模範となりうる。

先にも述べたように、少子化対策を少子化「防止策」としてとらえる場合には、一定の困難を認めざるをえない。少子化が世界的な傾向であり、先進国では軒並み出生率1.6~1.8程度である中、政策によって仮に大きな相対優位を作り出しても、わが国が2.0を超えることは難しい。出生率が1.8程度になっても、人口の漸減は起きるので、これを想定し、生産性向上や高齢者活用、移民受け入れなどを総合的に組み合わせて、人口が増えなくても住みやすい社会を作る努力も併せて必要である。

「健康寿命」の延びを生かす技術への投資を

幸い、人口減少と同時に進行する長寿化について、延びているのはいわゆる「健康寿命」であるという事実がある。詳しくは別の機会に述べたいが、厚生労働省の推計によると、2016年の「健康寿命」は男性72.14歳、女性74.79歳であり、2013年時点と比べ男性が0.95歳、女性は0.58歳延びた。平均寿命は、今もほぼ直線的に延びており、しかも、介護などが必要な期間、すなわち平均寿命と健康寿命の差は、この3年間に男性0.18年、女性0.05年改善している。健康な余命が長くなっているのである。

すなわち、昔とは比較にならないほど元気な高齢者が増えている。これを活用しない手はない。AI(人工知能)やロボティクスによる肉体的、知的労働のサポート、雇用の柔軟化などによって、経済的な生産性を落とさずに少子化時代に対応する手段を得ることも可能だ。たとえば、記憶力の低下をIT機器で補完すること、煩瑣な入力作業をAIに任せることなどによって、業務を高齢者に苦痛のないものに変革することができる。コンピュータ性能の向上を、機能や処理能力以上に、操作容易性の分野にフォーカスすることが考えられる。AIの活用により、自然言語で操作可能な機器は十分実用化できる。

高齢者活躍の社会環境を整え、これまで「65歳以上」と硬直的に考えられていた高齢者の定義を改めることができれば、社会保険の財源問題も労働力不足も同時に緩和することができる。もちろん、健康状態のすぐれない人を無理に働かせる趣旨ではない。体力気力を備え勤労意欲のある高齢者に、現役活躍の場を与えるのであれば、当事者にとって生活の充実と幸福につながる。その機会を増やすことが有益である。

技術を活用できれば、高齢運転者の増加について、「運転する権利」と「交通安全」の背反する問題として懸念する必要もなくなってくる。完全自動運転を待たずとも、既存技術の組み合わせで、アクセルとブレーキの踏み間違いや赤信号の見落とし、高速道路の逆走などの重大なミスは防止できる。これら安全装置に対する、高齢者向けの大規模な経済補助は、国策として早急な検討に値する。うまく運営すればエコカー減税以上の経済刺激にもなりうる。

さてマルサスは、人口の際限ない増加を止める要因は3つ、「疫病」「飢饉」「戦争」であると論じた。いまサブサハラ以外の多くの国々は、生活水準の上昇に伴う自然の出生率低下に直面している。出生率の急激な低下に伴う社会課題には重く難しいものもある。しかし、見方を変えて、マルサスの挙げた人口を減少させる3要因とこうした問題を比べれば、現代社会は18世紀の人口学者の予想よりはるかに望ましいものになったと言えないだろうか。

こうした中でわが国が、上記のような技術利用を高齢者活躍の文脈で推進し、世界に先んじて少子高齢社会の望ましいあり方を構築することは十分可能である。さらに、それを先行事例として世界に発信することは、意義あることと考えられる。

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