合計特殊出生率(total fertility rate)とは、女性が生涯に産む子の平均数を表す。以下、出生率と略記する。これが2であれば、1人の女性が平均2人の子を産むことを意味する。若年死亡も考慮すると、人口を維持するためには、これが2を若干上回ることが必要である。
さて世界銀行の統計によれば、2016年度の全世界合計の出生率は2.44である。2をかなり上回っているから、死亡を考慮しても世界の人口は増加傾向にあると言える。なお、1968年度の出生率は4.92であったから、半世紀で半減したことになる。
少子化が叫ばれるわが国ではどうか。2016年度は出生率1.44、2017年度1.43と2を大きく下回るので、このままだと人口は減少していく。
発展途上国でも出生率は低下している
さて、出生率は生活水準が向上すると減少する傾向を持つ。世界の先進国は軒並み2を下回っている。相対的に高いことで知られるフランスも1.96である。いくつかの主要国を拾ってみると、アメリカは1.82、福祉国家として知られるスウェーデンでも1.85、イタリアは1.35と日本よりも低い。
わが国では、少子化の原因を、新婚層の安定雇用や育児環境整備の不足に求める声も多い。これらの問題の対策は極めて重要で、国の経済の面からも、個人の幸福の面からも、優先的な対応が必要である。これが進めば、先進国の中での上位の水準、出生率でいえば1.8程度までの改善は夢ではない。しかし、こうした政策で先進国各国で並進する人口減少自体を止めることは難しい。
では、発展途上国、例えばバングラデシュはどうか。2016年度バングラデシュの出生率は2.10である。幼児死亡率の高さなどを考慮すると、これはほぼ人口維持水準といえる。
アジアの新興国を見ると、まず人口13億の大国である中国は1.62。経済発展して久しいシンガポールは日本を大きく下回る1.20。マレーシアは2.03、タイは1.48。理想的な人口ピラミッドをもつインドネシアで2.36、インドはそれより若干低い2.32である。いずれの国でも出生率はこの50年間にほぼ半減しているのである。
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