日清も明治もカルビーも…「工場新設」のワケ 2年で投資額倍増、業界に何が起きているのか

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飲料でも、たとえばアサヒ飲料は関東の主力拠点である「アサヒビール茨城工場」(茨城県守谷市)近隣の群馬県館林市で、55億円を投じ今年1月に物流センターを稼働させた。

延べ床面積3万4000平方メートル、年間の保管能力は3700万ケースと、同社としては最大の規模を誇る。これまで茨城工場で製造された飲料は、工場の敷地内や、レンタルしていた周辺の小規模倉庫にいったん保管されてから出荷されていた。

新物流センターの稼働で、域内でレンタルしていた3カ所の物流倉庫の機能を集約。倉庫から倉庫への輸送や在庫の分散がなくなるため、年間でトラック約1万台分、数億円の物流費削減につながるという。

「現段階でのコスト削減効果は大きいというわけではないが、今後も物流費の高騰が続くことを考えると今の時点で体制を整えておく必要があった」(親会社アサヒグループHD)。

チョコ各社は増産に走る

こうした合理化の一方で、海外需要や訪日観光客増を受けた増産もある。

国内のチョコレート販売最大手の明治は、2016年9月の発売から約1年半で累計5000万個を販売した「ザ・チョコレート」などの増産のため、2020年1月に坂戸工場(埼玉県坂戸市)で製造棟を新設するほか、大阪工場(大阪府高槻市)では2018年9月に生産ラインを増強。総投資額は約270億円だ。製造能力は坂戸工場で6割、大阪工場で2割増える。

チョコレート増産の背景にあるのは消費者の健康志向だ。チョコレート菓子類は、原料のカカオに含まれるポリフェノールの健康効果がうたわれた効果で、市場規模は2017年に5550億円と、5年間で30%近く伸びた(英調査会社ユーロモニター調べ)。ザ・チョコレートなど高価格・高カカオ(カカオ分70%以上)品が市場の成長を牽引している。

ライバルの森永製菓も数億円を投じて、高カカオ品で好調な「カレ・ド・ショコラ」シリーズを増産する計画だ。

カルビーは中国で人気が高まるシリアル「フルグラ」を輸出するため、約70億円をかけ北海道と京都でフルグラの製造を開始。2017年8月から稼働している北海道工場(北海道千歳市)の新製造棟に続いて、2018年8月には京都工場(京都府綾部市)の新製造棟も稼働する。いずれも観光地として中国人に人気のエリアで製造されたことを売りにする。

ネスレ日本も2017年8月、26年ぶりの新工場を兵庫県姫路市に建設。訪日観光客の間で人気がある日本独自フレーバーの「キットカット」を増産し、アジアへの輸出も強化する。

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