ネットに飛び交う意見に惑わされるべからず それは客観的な根拠に基づいた事実なのか
しかし、「端緒情報」を見つけるこの作業が、最も労力を必要とする大変な作業だと楊井さんは言います。
「『偽or偽装or嘘偽り』などのキーワードで絞り込み、さらに何らかのURLもひも付けられているTweetをチェックします。しかし、本当にファクトチェックが必要な情報は、われわれの経験では1000件に1件。まさに、わらの中から針を探すような作業です。また、業として毎日のようにやっていると、かなり疲れます。普通の精神状態ではできなくなります。ネットの情報をモニターしていると、キーワードである程度絞っているとはいえ、相当汚い言葉でいろいろ言っているTweetもあります。見ていて気持ちの良い情報は少ないですね。また、雑多な分野で常時いろんなニュースが入ってくるので、頭の中を整理するのも大変です。心的に負荷のかかる作業だと言えると思いますね」
「端緒情報」を見つける作業を効率化し、ファクトチェックを技術的にサポートすべく、「東北大学乾・岡崎研究室」「スマートニュース株式会社」、そしてFIJの3つの機関が協力して、AIを使った新しいツールの開発を進めています。
今秋までに実用化を目指す
東北大学大学院情報科学研究科の乾健太郎教授は、自身が研究する「自然言語処理」を生かした支援がしたいと考えています。
「これまでにチェックすべきだとわかっている記事とそうでないとわかっている記事を集め、その記事からある種のパターンを機械的に学習します。IT技術を使ってさまざまなところから情報を集め、よりファクトチェックしたほうがよさそうな記事、そうでなさそうな記事、その可能性を機械的に判断して、ファクトチェックすべき可能性の高そうなものをランキング。上位だけを人間に見てもらうことによって効率化していくことを考えています」
しかし、テクノロジーにはまだまだ限界があると楊井さんは言います。
「人の労力をできるだけ少なくできるような技術開発を進めていく。しかし、いくらテクノロジーが進化しても、自動的に正確/不正確の答えを出してくれるものではありません。あくまでも最初の作業を効率化してくれるものです。最終的にファクトチェックすべきものを絞り込んで調査するというのは人間がやるしかない。(ツールを活用して効率化することで)そこにできるだけリソースを集中させられるようにしたい」