好意を示すフレーズが「会談実施に向けたこれまでの金委員長側の努力に感謝し、楽しみにしていた」「対話は素晴らしいものになると感じていた、いつか実現することをとても楽しみにしている」「米国人人質の解放についての感謝」などである。
敵意を表しているのが、「あなたが最近示した途方もない怒りとあからさまな敵愾心(てきがいしん)を踏まえると、現時点では、会談は不適切」「核兵器の力はアメリカのほうがはるかに強大で、それを使わなくて済むことを神に祈る」「世界、とりわけ北朝鮮は、恒久平和と繁栄の重大なチャンスを逸した。これは歴史上きわめて残念な瞬間だ」などのフレーズである。
客観的に情報を伝えるフレーズは、「会談を両国のために中止する」「もしこの最も重要な首脳会談について気が変わったなら、遠慮なく言ってほしい」といったあたりだ。
短い手紙の中に、断片的な賞賛と、武力に関する脅し、中止の責任は宣言したトランプ大統領にあるのではなく、北朝鮮側にあるとの認識などが盛り込まれ、一貫性は弱いが、にぎやかな内容である。
同盟国にもケンカ腰のトランプ流
トランプ大統領の外交交渉は、同盟国に対して激しい非難や中傷を行い、結果的に有利な取引条件を得ようとするものである。メキシコの壁に始まり、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)やイラン核合意などで、現状を口汚く批判し、よりアメリカに有利な変更を図る手段も多用している。
このようなやり方は、同盟国側の対抗を招き世界を保護主義に陥れるリスクがある。前世紀の大戦をもたらした構造要因が、保護主義の蔓延であったことに鑑みれば、西側各国の知識層からトランプ批判が絶えないのは無理からぬ面もある。米『タイム』誌や英『エコノミスト』誌などの一定の教養層を対象とした雑誌は、もはや見飽きたという程度を超えて批判を繰り返し、支持層と反発層の分断は日を追って埋めがたくなる一方である。
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