イニエスタがヴィッセル神戸を選んだ「幸運」 ついに「生きる世界遺産」が日本にやってくる
以来16年間、「世界最強」と謳われるバルサの中核選手として活躍し2010年のW杯南アフリカ大会では決勝の延長戦でゴールを決め母国スペインを初の優勝に導いた。相手に対するファールが極端に少なく、ピッチの内外で常に謙虚なイニエスタを評し、かつてバルサの監督だったルイス・エンリケは「サッカーの世界遺産」と言った。
このクラスの選手が日本のピッチでプレーするのは実に久しぶりだ。Jリーグが創設されたばかりの90年代前半は、バブルの名残で日本の大企業にも資金力があり、金に物を言わせて世界中から有力選手をかき集めた。
鹿島アントラーズでプレーしたジーコ、ジェフ市原のリトバルスキー、浦和レッズのブッフバルト、柏レイソルのカレカ、名古屋グランパスのストイコビッチ。南米や欧州の代表チームで活躍した名選手たちがピッチで躍動してサポーターを沸かせた。自国リーグでワールドクラスの選手と対峙した日本の若い選手たちは、世界の技やスピリットを吸収し急激に成長する。それが1997年のW杯初出場を決めた歴史的な試合「ジョホールバルの歓喜」に繋がった。
日本サッカーのためには金を出す人は大事だ
しかしバブル崩壊とともにJリーグは海外の有力選手を呼べなくなる。自国リーグのレベル低下を目の当たりにした日本人選手たちは「ここでは成長できない」とばかりに、海外に流出した。
海外の有力選手が呼べないばかりか、国内の人気選手まで流出してしまったJリーグに、かつての高揚感はない。今、トップレベルで戦えなくなった欧州、南米の有力選手が向かうのは中国である。ブラジル代表経験のあるフッキは上海上港、アルゼンチン代表のラベッシは河北華夏でプレーしている。この傾向が続けば、中国でもかつての日本と同じことが起こり、やがてW杯出場を果たすだろう。
そうした中で、楽天は昨年、5年間で320億円という巨額を投じてバルサとグローバル・パートナーシップを結んだ。9億6000万円でポドルスキーを獲得し、今度は33億円でイニエスタである。
この大盤振る舞いを「金満」と呼ぶのは容易だ。しかし誰かが金を出さなければ、日本サッカーはいつまでたっても停滞したままである。「みんなで渡れば怖くない」のバブル期ならいざ知らず、これだけ経営環境が厳しい中では伝統的な大企業にリスクテイクは望めない。
何はともあれ、世界で最も美しいイニエスタのプレーが生で見られるのである。サッカーファンなら「世界が注目するJリーグ」を目指す三木谷氏の決断にケチをつける理由はないだろう。
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