東京で山椒ラーメンが静かに人気を呼ぶ理由 国産香辛料が織りなす独特の新しい味わい

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「中華蕎麦 にし乃」の山椒そば(筆者撮影)

国産山椒の香りは柑橘類が持つ清涼感が特徴的であり、食べた後はなんとなく甘味を感じるような後味がある。ウナギのように濃い味の料理に使うと、食べた後の口の中はさっぱりした感じになり、また、繊細な味の料理に使うと、素材の味を引き立たせる効果がある。

中国山椒のパンチの効いた辛さ、痺れと比べて、繊細なスープにも合わせやすいといえる。あっさり系の醤油ラーメンや塩ラーメンにもぴったりなスパイスということで、山椒に着目したラーメン店が出てきているといえる。

京都にある甘利香辛食品の甘利毅代表はこう語る。

「ピリッと爽やかな国産山椒の風味はダシと相性が良く、ダシの旨味をきわだたせてくれるはずです。自然なマッチングが進んでいるのではなかろうかと考えます。従来から、胡椒やニントンの辛さはラーメンのアクセントとして親しまれているように、国産山椒の上品な辛みもラーメンのアクセントとして効果的なのではないでしょうか。」

国産山椒は希少性を増している

ただ、国産山椒は希少性を増している。主たる産地のほぼすべてにおいて、農家の高齢化という問題に直面し、将来の安定供給が危惧されているからだ。山椒は小さい実の房をひとつずつ手摘みする。同じ手間をかけるのであれば他の農産品を栽培したほうが高収入なケースは多く、若手農家が新たに山椒の栽培を始める動機がないと言われる。

それなのに「国産山椒の需要量は年々増えており、生産量減少と需要増加により中長期的には価格は間違いなく上がっていく」(甘利氏)と想定される。現状で国産山椒の価格は中国産の花椒の5倍ぐらいになっているという。

入手が困難になってくれば、山椒を使ったラーメンは意外と広がらない可能性がある。MENSHOグループはこれを受けて自社生産を構想しているという。真剣に検討する局面はそう遠くないかもしれない。

井手隊長 ラーメンライター/ミュージシャン

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いでたいちょう / Idetaicho

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」「AERAdot.」等の連載のほか、コンテスト審査員、番組・イベントMCなどで活躍中。近年はラーメンの「1000円の壁」問題や「町中華の衰退事情」、「個人店の事業承継」など、ラーメン業界をめぐる現状を精力的に取材。テレビ・ネット番組への出演は「羽鳥慎一モーニングショー」「ABEMA的ニュースショー」「熱狂マニアさん!」「5時に夢中!」など多数。その他、ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。著書に「できる人だけが知っている 『ここだけの話』を聞く技術」(秀和システム)がある。

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