「おやつの我慢勝負に勝つ子」が優秀なワケ 自制心や忍耐力の育成が子どもを成長させる

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こうした状況は幼い子どもに限らず、大人も苦労している。

ダイエットや禁煙で悩む人はたくさんいるだろう。太りやすい食品やたばこを買ったりするのは自由だが、余計なことをしなければ、ダイエットや禁煙に成功するはずである。だが、誘惑に負けてつい余計なことをやってしまうのが人間である。

その一方で、最近まで甘いもの好きだったりヘビー・スモーカーだったりした人が、いきなりピタリとやめる場合もある。それが自制心であり、忍耐力である。これを簡便な方法で的確に測定していたのが、マシュマロ・テストだった。

4歳時点の自制心が大学入試の成績を左右する

マシュマロ・テストは18年間、同じ子どもたちが22歳になるまで追跡した。その結果が実に興味深い。

当時おやつを待てた子は待てなかった子に比べ、青少年期に問題行動が少なく、理性的に振る舞い、アメリカの大学入試で標準的に用いられているSAT(大学進学適性試験)のスコアで、平均より相当高い点数を取っていた。成人後の肥満指数が低く、危険な薬物に手を出さず、対人関係に優れ、自尊心が高いとの報告もある。

簡潔に言えば、今日やるべき宿題に帰宅後すぐに取り組める子と、ついつい誘惑に負けてテレビゲームを始めてしまう子の違いなのである。それが小学校入学以降、毎日のように繰り返され、さらに12年間蓄積された結果、このような違いがもたらされたというわけである。

まだ子どもだからと言って、甘く考えてはいけない。4歳時点での自制心が大学入試の成績すら左右する可能性がある。

ここまで読むと、「なるほど。では、明日から子どもにおやつを我慢するよう厳しくしつけよう。そうすれば先々、学校の成績がよくなるわけだ」などと思うかもしれないが、事はそう単純ではない。

後編では、非認知能力の育成に重要な役割を果たす遊びの大切さについて解説する。

奈須 正裕 上智大学教授

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なす まさひろ / Masahiro Nasu

上智大学総合人間科学部教育学科教授。東京大学大学院教育学研究科博士課程教育心理学専攻を単位取得退学、博士(教育学)。神奈川大学助教授、国立教育研究所教育方法研究室長、立教大学教授などを経て、2005年より現職。新学習指導要領の策定にかかわるなど、教育界のキーマンとして知られる。著書に『「資質・能力」と学びのメカニズム』(東洋館出版社)、『答えなき時代を生き抜く子どもの育成』(図書文化社)など。

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