若者7500万人が無職にあえぐ世界の暗い未来 超高齢社会の到来は日本だけの問題ではない
老後の金銭的不安を考えても、長いリタイア生活は多くの人にとってまさに夢となってしまった。年配者の多くが退職したくてもできない。米国立退職貯蓄研究所の試算によれば、2015年、アメリカの全世帯において、退職準備貯蓄口座の残高の中央値はわずか2500ドル(約27万円)だったという。また55~64歳の労働者のうち、年収以上の額を貯金しているのは3人にひとりにすぎない。
これらの数字に加えて、十分なセーフティネットもなく、国民皆保険もなく、家族とは疎遠で離れて暮らしているという状況から浮かび上がるのは、さっさと仕事を辞めて年金生活に入ることが、アメリカではますます難しいという事実である。これまでセーフティネットが充実していた欧州でも、このところの政策変更と予算削減を受けて、安定したリタイア生活に対する期待が揺らぎはじめている。またどこの国でも、女性のほうが家事や子育てに時間を取られ、生涯年収が低く平均寿命が長い。そのため、年配の女性はとりわけ老後の生活を支えるために仕事に戻る必要がある。
UberやAirbnbに参画する高齢者たち
新しい技術プラットフォームとシェアリングエコノミーの登場によって、もっと柔軟に働きたいという年配労働者の希望もかないはじめた。2015年時点で、ライドシェア大手ウーバーのドライバーの4人にひとりが50歳以上であり、30歳以下のドライバーよりも多い。民泊大手のエアビーアンドビー(Airbnb)で、宿泊施設を貸し出すホストの1割が60歳以上である。追加の生活費を稼ぐという動機だけではない。そこにはつながりたい、社交的で積極的な人生を送りたいといった動機も働いているのだ。
2014年6月にイギリスの労働・年金省が報告したところによれば、40代とほぼ同数の年配労働者(50歳から公的年金を受給する年齢までの労働者)が働けば、2013年のイギリスのGDPは1パーセント上昇していたという。今後、現役世代が縮小するという事実を考えれば、1パーセントは決して微々たる数字ではない。
2050年には、日本、韓国、ドイツ、イタリアのような先進諸国において、生産年齢人口は25パーセントも減少する。それほど裕福ではないロシアと中国においても、21パーセント縮小する。その衝撃をもっとわかりやすく言い換えれば、2015年から2020年までのわずか5年間で、中国は2億1200万人もの働き手を失うことになるのだ──この数字はブラジルの人口にほぼ匹敵する。