米国で賞賛される"連続起業家"という人々 スポーツ化するスタートアップを超えて

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早くから「ソーシャル」の意味を理解していたことも、彼の強みだ。スタンブルド・アポンは、同社によるマニュアル作業での分類に加えて、ほかのユーザーのお勧めが参考にされている。ソーシャルが声高く騒がれる前から、インターネットに何ができるのかを見抜く先見性を持ち合わせていたわけだ。

またウーバーは、ユーザーとドライバーの間にはソーシャルと同じつながりがありえることを見抜いた結果だ。しかも、インターネットの中だけでなく、現実の世界にその利便性を拡大した。

スポーツのように起業するだけではなく

キャンプはその後2009年に、資金を集めて再びスタンブルド・アポンを買い戻した。このときは資金集めに一苦労したが、大企業で動きが取れなくなっていたスタンブルド・アポンを元のスタートアップのように生き生きとしたサイトに回復させた。スタートアップという状態がどれほどアイデアとビジネスにとって大切なのかを実感した瞬間だ。

キャンプは今、2つの会社では会長職に就き、新たにプライベートジェットをウーバーのように運営するもうひとつのスタートアップにかかわっている。さらにエクスパという、アイデアファクトリーも今年スタートさせた。

エクスパは、ベンチャーキャピタルやインキュベーターとは趣が異なり、ただ新しいアイデアを見つけて投資するだけではなく、持ち株会社のように構成し、自ら腕をまくって、どっぷりとその発展にかかわるのが目的という。そこでは、これまでシリアルアントレプレナーとして体験した教訓を丁寧に応用していく。

何でも過去1年間の間に、イケそうなアイデアが10以上も頭に浮かんだとのことで、これをスタートアップとしてビジネスに変換する計画だ。「まあ、現実的にはその3~4個が成功すればいいと思っていますがね」とキャンプは語っている。

最近はまるでスポーツのようにスタートアップが起業される。しかし、キャンプは過去10年間に多くの実地学習を積んだ。うまくいかなかったことは、なぜ失敗したのかを考え抜いて書き留めてきた。今では、スタートアップの可能性をフルに発揮させるための効率的な方法を習得したと感じている。

そして、スタートアップには何が必要なのかも知っている。ただ安定を求めてやってくるような社員は不要、ということだ。スタンブルド・アポンを買い戻したのも、大企業になったイーベイではいい人材が入ってこないことが理由のひとつだった。しかも自分自身は、会社の立ち上げや最初の製品開発に威力を発揮する人材で、会社が成長し始めたら別の人物に経営を譲るほうがいいということも心得ている。

こうした体験と教訓をエクスパに投入する。注目している領域は、メディア、ロケーション、データアナリティックス、スマートフォン、センサーにかかわるモバイルアプリだという。

スタートアップは一日にして成らず。真のシリアルアントレプレナーとはどんな人物なのか。それはキャンプの一挙一動をフォローすることで理解できるだろう。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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