世界各国で起きている新聞社の財政難。それによって、“社会の番人”としてのジャーナリズムが脅かされている――。誰もがそう考えていたが、その解決に乗り出した起業家がいる。オークション・サイト大手イーベイを創設したピエール・オミディアーだ。
フォーブス誌によると、オミディアーは世界で123番目の金持ちで、資産は85億ドル。その中から2億5000万ドルを費やし、今最も注目を集めるジャーナリストを雇い、アメリカ政府の透明性を求める調査ジャーナリズムのメディアをゼロから打ち立てる。これがその計画だ。一攫千金を成したテクノロジー企業の創設者でありながら、他の起業家とはまったく異なる使命感を持つオミディアーに今、世界の目が注がれている。
シリコンバレー経済圏で存在感
イーベイは日本には完全に上陸を果たせなかったのだが、2つの意味でシリコンバレーになくてはならない企業である。ひとつは、ドットコム・バブルを見事に生き抜いた企業として、そしてもうひとつは、現在のシリコンバレーの経済圏を形成するパワフルなエコシステムが、そのイーベイから生まれてきたからである。
イーベイが買収した支払いシステム、ペイパルの創設メンバーにはリンクトインのリード・ホフマンや、テスラのイーロン・マスクらがおり、いわゆる「ペイパル・マフィア」として、シリコンバレーの次のスタートアップを多く起業している。
オミディアーは1967年、イラン人の両親の元にパリで生まれた。両親は、イランのパフラビ王朝による独裁的な政治環境を逃れるためにパリに留学していた。父は医師、母は学者だ。オミディアーが6歳の頃に家族はアメリカに渡り、オミディアーはワシントンやハワイで育った。
小さい頃からコンピュータに魅せられていたオミディアーは、学校の図書館の図書目録のためのソフトウェアを書いたりしていた。タフツ大学でコンピュータ科学を専攻した後に、シリコンバレーのテクノロジー関連企業で仕事。その中には、アップルの関連会社クラリスもあった。ペン入力するコンピュータ技術を開発して、起業したこともあった。
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