「あと数十年の間に、賢いロボットがわれわれの仕事を代わりにやってくれるようにならないと、われわれ人間の生活水準と寿命が危機にさらされる」
こう言うのは、ロボット研究者として世界的にその名前が知られるロドニー・ブルックスだ。ことに先進国では人口の高齢化が進み、ロボットの手を借りないと生活も生産も難しくなる。ブルックスは、そんな未来に向けてロボット開発を積極的に推し進めろと、世界に向かって掛け声をかけているひとりだ。
ブルックスは、ロボットを空想の世界から現実の世界へ持ち込んだ人物でもある。たとえば、日本の多くの家庭で床掃除を受け持っているお掃除ロボットのルンバは、ブルックスが共同創設者となっているアイロボットの製品だ。
また、ブルックスは産業ロボットのメーカーであるリシンク・ロボティクスを数年前に創設。ここでは、工場の製造現場で普通の人間の作業員と一緒に並んで数々の仕事をこなすロボット、バクスターを開発した。
これまでの産業ロボットと言えば、おりに入れられて厳重にその安全性が確保されていたが、バクスターは違う。つまりブルックスは、ロボットの空想を現実にしただけでなく、より人間の傍らで働く親近感のあるロボットを生み出しているのだ。
独自のロボット観
ロボットはまだまだSF世界の出来事だと信じられているのに、なぜブルックスはロボット技術を人々が日常で使えるものにできたのか。
それは、ブルックスの固有のアプローチにある。ブルックスは、ロボットはロボットだけで成り立つのではなく、現実の世界と組み合わされて初めて成立すると信じている。すなわち、ロボットを全能にしようとするのではなく、ロボットを特定の役割の中で、現実世界とうまくやり取りできるようにすることによってこそ、ロボットが成立するということだ。
ロボットと世界はふたつでひとつ。人だって、外部世界への反応によって構成されていると理解することもできるだろう。人と世界が分ちがたくひとつに結び付いているように、ロボットも外界と相互作用することによって、初めて、その存在の意味を持ちうるのだ。そうしたアプローチが、ブルックスのロボットを支えている。
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