米国で賞賛される"連続起業家"という人々 スポーツ化するスタートアップを超えて

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しかも、ウーバーでは、普通ならば高くて乗れない黒塗りのハイヤーがやって来る。とかくアメリカのタクシーは、ニューヨークのような超大都市以外では路上で見つけるのも難しい。やっと乗っても、サービスが悪く、何かと安心できない要素が多い。だが、ウーバーならばタクシーよりはほんのちょっと高いが、豪華なハイヤーが確実に自分を迎えにきてくれる。

タクシー配車の常識を変えたUber(画像は同社HPより)

乗り込んだらセレブ気分。「私だけのドライバーサービス」と好まれているゆえんだ。こんな行き届いたサービスを、インターネットとスマートフォンによって可能にした功績は大きい。

スタンブルド・アポンとウーバーでキャンプがやったのは、今までなかったものに人々をアクセスさせ、人々が便利に生活できるようにしたことだ。ついでに、これまでの既存の方法を変えてしまう。

「世界を変えようとしているのか。それが、僕がいつも問うことです」とキャンプはスタートアップを始める際のアプローチについて説明している。ウーバーでは、タクシー会社からの反対や規制に縛られながらも、ユーザーファンを増やして、各州当局を納得させ続けているという過程も伴っている。

最悪の不景気で花開く

もうひとつ驚くべき点がある。2002年に創業したスタンブルド・アポンも2009年に始めたウーバーも、アメリカの景気が最低の事態にある時期にスタートしたということだ。

スタンブルド・アポンは、カナダのカルガリー大学で大学院に通ってソフトウエアエンジニアリングを研究していたときに、友人たちと「何か会社をやりたいね」と始めた。ひどく苦労することもなくエンジェル資金が集まり、その後、人気が出たことでベンチャーキャピタルも投資し、そして大手オークションサイトのイーベイに7500万ドルで買収された。創設後5年のことだ。収入のアテもない空っぽのドットコムバブルが全滅した後も、じっくりと人間的なこのサイトの雰囲気が生き残ったということになる。

ウーバーの場合は、ハイヤーのユーザーだけでなく、個人ハイヤーを営むドライバー側にとっても、このサービスが役立った点は重要だ。なかなか仕事にありつけなかったドライバーも、ウーバーで客にしっかりとしたサービスを提供することで評価を上げていくこともできる。また、客の勝手な事情でドタキャンされても、一部の料金は保障されるので、完全な泣き寝入りはなくなった。

ドライバーと客を同等に尊重する方法が、両者にとって役立っている。たった数台のハイヤーで始めたウーバーは現在、世界の35都市で展開され、車も普通のタクシーやラグジュアリー車、SUVまでユーザーが選択できるようにしている。

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