元日本代表・楢崎正剛が42歳の今も戦う矜持 「弱点」といわれる日本人GKの厳しい現実

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そこに割って入ろうとした選手は何人もいた。曽ヶ端準(J1・鹿島アントラーズ)や都築龍太(現さいたま市議会議員)など能力の高いGKはいたが、2008年に代表デビューした川島は頭抜けた向上心と闘争心を押し出して2人に挑んできた。最終的に2010年南アフリカ大会で正守護神の座をもぎ取った後輩GKのポテンシャルの高さを、楢崎は彼が2004年に名古屋に移籍してきた当時から見抜いていたという。

楢崎正剛にとっての川島永嗣の存在

「永嗣はあの頃からセービングの幅も迫力もあったし、能力は高かったですね。感情が出る傾向も強かったけど、若いし、特徴としてはよかったんじゃないかなと思います。それにつねに野心があふれまくっていた(笑)。『いつ出ても自分がベストなことをする』『最高のパフォーマンスを見せる』という姿勢を前に出していた。僕は名古屋に20年いますけど、激しくポジション争いをした感覚を唯一抱いたのは、永嗣ですね。

そういう野心はプロとして当然、持っていなきゃいけない部分だけど、彼は人間としても向上心がすごかった。語学の勉強にしても、名古屋に来た頃は『芝生』って単語がわからなくて、僕のほうが『グラス』って教えた記憶があるくらいなのに、今では5カ国語を操る語学の達人になってる(笑)。そういう貪欲さは能活にも通じるところ。やっぱり上に行く人は共通性がある。それが僕にあったらなとうらやましく感じますね」と楢崎は心からのリスペクトを口にした。

5月上旬の取材で川口・川島両選手としのぎを削ってきた経験を、笑顔も交え振り返った楢崎選手(筆者撮影)

3人が高いレベルで競い合っていた時代が2010年の南アで終焉を迎え、その後の日本代表は川島が正守護神として大きくリードしている状況だ。

南アと2014年ブラジルのワールドカップ2大会の経験値に加え、欧州8年間のキャリアを武器に欧州5大リーグ1部のレギュラーに上り詰めた35歳の守護神の実績は比類なきものがある。その現状を楢崎は少なからず危惧しているようだ。

「確かに今は外国人GKがJリーグに増えて日本人GKが試合に出られないケースも多くなっているけど、代表でも永嗣にもっとプレッシャーをかけるやつが何人も出てこないといけないと思います。チームのバランスも大事かもしれないけど、やっぱり強い個性を持った選手が必要。

技術的には昔に比べると上手で、いい選手が増えているけど、GKは精神的なことが多くを占める。そこは大事ですよね」とベテラン守護神は語気を強める。

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