日本人が知らない「中国製自動車」の超速進化 日本からも技術者引き抜き水準を上げている

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NIOは大手メーカーに劣らぬ面積のブースに、昨年中国市場で投入したEV「ES8」を6台も並べた。製品のバリエーションに頼らず新製品と顧客との接点を作ることに徹し、信頼を得ようという方向性は世界中のアップル・ストアでよく目にするものだ。

中国のベンチャーEVメーカー蔚来汽車が展開するNIOのブース(筆者撮影)

来訪者はここで機械的な品質やデザインだけでなく、ナビゲーションやコネクティビティ、オーディオの操作性のチェックに余念がない。中国メーカーの新型車の多くには、廉価なモデルでも意識的に大型化されたディスプレーを備えるものが目立つ。これは中国の消費者だけでなく世界で歓迎されそうだ。

世界で本当に通用する存在になりえるか

自動車先進国からデザイン、品質、マーケティングの各分野を急速に吸収している中国の自動車たちは、このような静的な観測ではかなりの進化がうかがえる。ただ、総合的にみて世界で本当に通用する存在になりえるかどうかは注意してチェックする必要がありそうだ。

ドイツを筆頭とする高速自動車社会に対応するには足回りの基本性能が確保されなければならないが、J.D.パワーの調査でも弱点として指摘されているように、操縦性を強くアピールするクルマはみられなかったし、ショーで見たかぎりでも、車格の大きなSUVにもかかわらずブレーキディスクのサイズがとても小さいクルマがあった。

海外で売るなら環境や安全にまつわるさまざまな規制を各国でクリアしなければならないし、アフターサービスや販売のネットワークづくりも不可欠だ。世界的にはいまや大きな勢力となった韓国車の輸入が、日本では途絶えていることに象徴されるように、中国車の本格的な進出も一朝一夕でというわけにはいかないだろう。

真田 淳冬 コラムニスト

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さなだ きよふゆ / Kiyohuyu Sanada

メーカーはじめ自動車業界に長らく籍を置き、1950年代から現代に至る世界中のさまざまな乗用車をドライブした経験を持つ。歴史、経済、技術といった分野をまたぐ広い知見を買った東洋経済オンライン編集部が独自に著者として招いた。

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